ヨリ子さんは無敵
【シロクマ文芸部: 鍋の具は】
※小牧幸助様主催のお題に寄せて
鍋の具は、山ほどの炒めタマネギ。
それから、高原牧場産のバターで
ソテーした大振りのマッシュルーム。
あまり薄くはスライスしないわ。
だって食感が無くなるもの!
あとは、ご当地のブランド和牛、
但馬牛の薄切りを、
サッと表面だけ焼いたものよ。
香ばしくなるし、旨味が逃げないの。
これを惜しげなく、タップリ入れる!
ケチケチしてたら私の味は
決して出せないの!
ソースのベースに使う小麦粉は、
近くの昌吉おじさんが育てた
小麦を、水車の石臼で粉にしてるわ。
そこらで売ってるモノとは
全然風味が違ってよ!!
ダマにならないよう、溶けたバターと
混ぜながら炒めるの。
粉臭さを残さず、高原バターの
良い香りだけを充分に立たせながら、
手を抜かずに木べらで混ぜる。
ここが最初のポイントね!
トロトロ琥珀色に輝くソース、
いつ見てもウットリだわ🩷
そこに投入するのが、
このヨリ子さん特製トマトソース。
選ぶトマトはね、甘過ぎないのが
肝心なの!
牛肉がとっても美味しいから、
少し酸味がある方が、よりお肉の
旨味を引き立たせるわよ。
それから、ここでひとつ目の魔法!
このお店を始めた祖父から、
パパとママへ、それから私へ
継ぎ足してきたデミグラスソース。
これをブレンドするとね?
本当に奥深い美味しさの
ソースになるから不思議!✨️
だからこれは、魔法なの。
きっとAIでも再現出来ない、
私だけの味の魔法。フフフ🩷
あ、ここからは秘密の味付けだから、
詳しくは見せられないわ!
だから私がいいと言うまで、
お庭でも見ててちょうだいな。
ええ、そうなのゴメンなさいね。
別にケチで教えない訳じゃないのよ?
私の作る味をいくら
言葉や文字で伝えたところで、
この町や山や人や水、
それにこの山里の、澄んだ空気とか?
そんなのも全部入ってこその
美味しさってあるじゃない?
だから、ね?
ホントにゴメンなさい!
ほらほら!見て!!
庭の山茱萸の木に
コゲラが来てるわよ!!
え?
コゲラ知らない?
小さなキツツキよ。可愛いのよ?
そうそう、幹をクルクルと
回ってるでしょ?
いえ、リスじゃないの。小鳥よ!
ちょっとコゲラでも
眺めてて頂戴。
仕込みを終えたら私も行くから。
お待たせお待たせ!
仕込み終わったわよ。
後はコトコト煮込むだけ♪
その間にお茶しませんこと?
美味しい茶葉入りの
クッキーもあるわ。
このお茶はね、『クロモジ茶』
スッキリ素敵な香りでしょ?
『クロモジ』ってご存知?
昔から爪楊枝やお箸に使われてる
とっても良い香りの山の木なの。
殺菌作用もあるとかで、
昔は口臭予防に使ってたそうよ。
ね?美味しいでしょ?
ふぅ…落ち着くわ☺️
じゃあ次にお鍋を混ぜに行くまで、
恋バナでもしましょうか?
やだ、何だか恥ずかしいわね!
私、幼馴染の星汰さんを
ずっと好きだったの。
でも彼、
『農家は嫌だ』って
都会へ行ってしまったの💧
『一緒に行こう』
と言ってくれたけど…
とぉっても嬉しかったけど………
でもダメだった。
私はこの町が好き。
このお店が好きで、
祖父から続いたハヤシライスの
味を守って行きたかった。
それはきっとね…
私が私を大事にするのと同義なの。
だから、彼と一緒には行けない。
ええ、そりゃ泣いたわよ?
泣いて泣いて、何日も泣いて、
そして言ったわ、『サヨナラ』って。
やだわ、何であなたが泣いてんの?
もう昔の話よ。
美しい想い出だわ。
でもね、その頃常連さんに
こう言われたのよ。
『最近のハヤシライスは、
少し切ない味だね』
ってね。
怖いわねー。
心が味に出ちゃうみたい。
どんなにレシピ通りに作っても、
気持ちや心で味は変わるの!
こんなに怖い事ってある??
だからね…
もう一つの魔法を教えましょう。
それはね、お料理を作るあなた自身が
幸せであることよ!
どんな良いレシピで作っても、
素晴らしい食材を使っても、
作るあなたが不幸な気持ちだと、
美味しいものは作れないし、
食べた人にも伝わるの。
だからね、
幸せにおなりなさい。
何も大金持ちになるとか、
絶世の美女にならなくてもいい。
空が綺麗だとか、
楽しい夢を見たとか、
美味しいお菓子を食べた、
友達と話した、子供が笑った…
そんな、小さな幸せを思い返しながら
お鍋の中を見てご覧なさい?
きっとそこには、
素敵なあなたが映ってるから。
その幸せな顔がお料理に溶けて、
一緒にコトコト煮込まれてゆくの。
だからねぇ、
あなたが私のハヤシライスを食べて、
幸せな気持ちになったのは、
私の幸せが溶けてるからよ!
それが私の、秘密のレシピ。
『幸せのハヤシライス』の正体よ!
さあ、そろそろお鍋のご機嫌を伺って
火を止めるとしましょうか。
いいえ、まだ完成じゃないわ。
これから仕上げのハーブを入れて、
明日まで寝かせて育てるの。
美味しくなるまで、また明日!
ほらほら、
採れたてのハーブが来たわよ!
手を振ってるあの人は、
私の夫、星汰さん。
あの人ったらね、
勢い込んで都会へ行ったのに、
たった数年で戻ってきたの。
都会のどんなレストランでも、
私のハヤシライスより美味しいのが
見つからなかったんですって!
ねぇ、失礼だと思わない?
私をあんなに泣かせたクセに、
忘れられなかったのは私よりも、
私の作ったハヤシライスだなんて!
酷くない?
私、一体何に嫉妬すりゃいいの?
だって私とハヤシライスは、
姉妹のような、母子のような、
一心同体のようなものじゃない?
さあさあ、これでお話はおしまい。
今夜は娘が孫を連れて来るの。
一緒にお夕飯を食べましょう。
明日のランチに、今日作っておいた
ハヤシライスをご馳走するわ。
こんな話で役に立ったかしら?
あなたの書く記事が読める日を、
楽しみにしていますよ。
ああ、そうだ!
最初にこう書いて欲しいわ。
“このお話を、ハヤシライスの申し子
『林 頼子』さんに捧ぐ”
ね?素敵な名前でしょ?
私の名前、『ハヤシライス』って
読めるんだもの!
うふふふ💕
こんな無敵で最強の女、
他に居ないわよね!
最高だと思わない?

このお姉様のお名前は知りません。
※※※ MEMO ※※※
ハヤシライス愛が高じて、
パッケージのお姉様のイラストから
こんな創作物語を書いてしまう。。。
私、ちょっとヤバいかも知れません。
(笑)
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