スプラッター時代劇の極北 『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』
現在公開中の『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』。筆者はまだ見ていないが『子連れ狼』シリーズから影響を受けているという。そんな訳で今回紹介するのはシリーズ1作目『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』だ。小池一夫・小島剛夕の漫画『子連れ狼』を原作としたこの映画シリーズは海外でも公開されており評価・人気ともに高い。
池波正太郎原作の『鬼平犯科帳』シリーズや、『たそがれ清兵衛』以降の山田洋次監督による一連の藤沢周平ものなど“江戸の情緒”を前面に押し出した時代劇が近年多かった傾向があるが、それはあくまで一面。時代劇はアクションやエンターテイメント性を重視したものも本来多い。『子連れ狼』シリーズは後者で、とにかく“格好良い”のである。
“公儀介錯人”の地位を手に入れようとする柳生一族の陰謀により、妻を殺され職を追われ浪人の身となった拝一刀(若山富三郎)と大五郎(富川晶宏)。親子2人の冥府魔道の道行きである。
前述した拝一刀親子が行く“冥府魔道”を現したタイトルバックがまず格好良い。画面左に炎、右に水の流れを合成し真ん中の一筋の道を大五郎を抱えた一刀が歩くというものである。
時代劇の醍醐味である“チャンバラ”だがこれも抜群に良い。そもそも若山富三郎が殺陣の巧い役者だということもあり、スピード感のあるチャンバラを見せるが、この映画では殺陣の効果音を強調しより緊迫感を高めている。特に一刀と柳生備前守の勝負の場面ではしばらく無音にし、勝敗が決する斬撃にのみ効果音を入れるという演出はシンプルながらも格好良い。
さらに立ち回りの間に大五郎の表情を挟む編集が独特のリズムを生むと同時に、大五郎も父・一刀と共に戦っていることを明確にしているのだ。
そして『子連れ狼』と言えばその過剰なスプラッター描写である。時代劇におけるスプラッター描写の始まりは、黒澤明の『椿三十郎』のクライマックス、三船敏郎と仲代達矢の勝負と言われるが、本シリーズは最早その比ではなく“スプラッター時代劇の極北”と断言しても良い。
屋敷での戦いでは極端に血は噴射し、畳は大量の血で汚れ、首には折れた切っ先が突き刺さる。クライマックスの湯治場では切断された足を画面手前に置き斬られた相手を奥に置くというとんでもない構図があり、初見時にはぶっ飛んでしまった。
シリーズの中でも本作で特筆すべきなのは、全体の敵であり回想に登場する柳生の面々の特濃さ。柳生備前守は大島渚組の渡辺文雄、柳生蔵人はドラマ『太陽にほえろ!』で知られる露口茂。そして極めつけは伊藤雄之助の柳生烈堂であろう。「いかん、水に入っては……」はいやでも耳に残ってしまう。本作以降は配役が変更になっているのが少々残念であるが……。
