パワハラを組織全体に伝播させないために
パワーハラスメントの問題が起きるたびに、私が痛感することがあります。
それは、組織の雰囲気は、一番上に立つ人の姿勢に大きく左右されるということです。
トップが常に強いプレッシャーを抱え、そのプレッシャーを部下にぶつけるような組織では、その空気は驚くほど早く伝播します。
部長は課長へ。
課長は係長へ。
係長は担当者へ。
こうしてプレッシャーは上から下へと連鎖し、いつしか組織全体が「怒られないこと」を優先するようになります。
その結果、本来最優先であるはずの安全や品質、お客様への最善の対応よりも、「上司の機嫌を損ねないこと」が優先されてしまうのです。
では、この連鎖を止めるにはどうすればいいのでしょうか。
理想を言えば、トップ自身が変わることです。
しかし、現実にはそれが簡単ではない場面も少なくありません。
そんなとき、私が管理職として心がけていたことがあります。
それは、自分がプレッシャーの防波堤になることでした。
自分の会社生活を振り返っても、信頼できたのは、防波堤になってくれた上司でした。
上から厳しい言葉を受けても、それをそのまま部下へ流さない。
責任は自分が負う。
部下には萎縮ではなく、「どうすれば安全に仕事ができるか」を考えられる環境を残す。
もちろん、簡単なことではありません。私も最初は上手くできず、そのまま部下に伝播させ、萎縮させてしまったこともあります。
その反省から、とにかく自分のところで食い止めようと腹をくくりました。
私自身、厳しい叱責を受けたこともありますし、不利益な立場に置かれたこともあります。
それでも、「ここで自分が受け止めなければ、このプレッシャーは部下へ流れてしまう」と考えていました。
管理職は、単に仕事を管理する立場ではありません。
時には、組織の圧力から部下を守る防波堤になることも、大切な役割だと思っています。
その防波堤があるからこそ、部下は上司の顔色ではなく、安全や品質、お客様のために正しい判断をする勇気を持つことができます。
私は、ハラスメント防止とは単に「暴言をなくすこと」ではないと思っています。
プレッシャーの連鎖をどこかで断ち切ること。
その役割を担う管理職が一人でも増えれば、組織の空気は確実に変わります。
そして、その積み重ねこそが、心理的安全性の高い職場づくりにつながるのではないでしょうか。
