第2話|1万円の講座は売れた。でも、このままでは仕事にならないと思った。
「教える」より「作って」が求められていた話
独立前、私はテストマーケティングのつもりで、
「1万円で会社のホームページを作れるWordPress講座」
のようなものをやっていました。
知り合いベースではありましたが、数名が参加してくれて、内容にも満足してもらえました。
なので、まったく売れなかったわけではありません。
むしろ最初は、
「これ、いけるかもしれない」
と思っていたくらいです。
でも、少し冷静に考えると、だんだん怖くなってきました。
1人1万円。
仮に1回に教えられる人数が最大5人だとしたら、満席でも売上は5万円です。
しかも、その5人を毎回集めなければいけない。
講座の準備もある。
開催時間も必要。
開催後に質問が来ることもある。
月に何回できるんだろう。
毎回5人集めるには、どれだけ集客しなければいけないんだろう。
仮に月4回満席にできても、売上は20万円。
しかも、その前提が「毎回満席」です。
考えれば考えるほど、
「売れるかもしれない」と「これで食べていける」は、全然違う話だな
と思うようになりました。
そもそも、なぜ講座をやろうと思ったのか
私はもともと、地方の小さな会社を支援する仕事がしたいと思っていました。
父も地方で家族経営の会社をやっていて、実家に帰るたびに、簡単なPC操作を教えたり、ちょっとした作業を手伝ったりしていました。
会社員として普通に使っていたOfficeの機能ひとつでも、
「知らない人は結構いるんだな」
と思うことがありました。
専門のIT担当者を雇うほどではない。
でも、少し分かる人がそばにいたら、仕事がずいぶん楽になる。
地方の小さな会社には、そういう困りごとがたくさんあるんじゃないか。
そんなことを考えていました。
だから、
「ホームページも、自分で作れて、自分で更新できるようになればいい」
という考えは、私の中ではかなり自然でした。
WordPressなら、作ったあとも自分たちで更新できる。
外注費も抑えられる。
小規模事業者には合っていると思っていました。
講座そのものが悪かったとは、今でも思っていません。
でも、相手が欲しかったのは「作り方」ではなかった
そんな頃に、ホームページについて相談された方から言われました。
「作り方を教えてほしいんじゃなくて、作ってほしい。」
なるほど。
作ればいいのか。
今思えば、とても単純な話です。
でも、そのときの私には結構大きな気づきでした。
私は、
「これを覚えれば、自分でホームページを作れるようになります」
という価値を提供しようとしていました。
でも、相手が欲しかったのは、
ホームページが完成すること
だった。
WordPressを覚えたいわけではない。
本業とは別に、Web制作の勉強をしたいわけでもない。
必要な情報が載ったホームページがあって、自分の会社のことをきちんと伝えられればいい。
私が考えていた「相手のためになること」と、相手自身が欲しいと思っているものには、少しズレがありました。
小さな会社の負担を減らしたいつもりが、仕事を増やしていた
ここも後から気づいたことです。
私は、
「自分たちで更新できた方がいいですよ」
と思っていました。
もちろん、それが合う会社もあります。
でも小さな会社では、社長自身が営業も現場も経理もやっていたりします。
そんな人に、
「WordPressも覚えれば、自分でできますよ」
と言う。
それって、見方を変えると、
新しい仕事を一つ増やしている
んですよね。
私としては負担を減らしたいつもりだった。
でも相手からしたら、
「いや、そこはやってほしい」
だった。
この経験から、
自分が良いと思う提供方法が、そのまま相手にとって良いとは限らない
ということを学びました。
売れた。でも、事業として続けにくかった
そして、もう一つ大きかったのが、
「売れる」と「事業として成立する」は違う
ということです。
1万円の商品を数人が買ってくれた。
参加した人も満足してくれた。
ここだけ見れば、テストマーケティングとしては悪くありません。
でも、事業として考えると、
1回に何人対応できるのか
月に何回開催できるのか
その人数を毎回集められるのか
準備にどれくらい時間がかかるのか
開催後のフォローはどれくらい必要か
まで考えなければいけません。
私の場合、
「これを毎月安定して回していくのは、かなり大変そうだ」
という結論になりました。
その頃に「作ってほしい」というニーズが見えた。
だから、ホームページ制作へ方向転換しました。
今振り返ると、この経験から学んだことは大きく3つあります。
1. 自分が売りたいものと、相手が欲しい結果は違う
提供する側は、どうしても「自分ができること」を商品にしがちです。
私はWordPressを教えられる。
だから、WordPress講座。
でも、お客さん側はWordPressそのものを欲しがっているとは限りません。
欲しいのは、
会社のホームページ
問い合わせが来る状態
自社のことをきちんと説明できる場所
更新で困らない仕組み
だったりします。
今なら、
「何を提供できるか」
より先に、
「この人は、最終的にどうなりたいんだろう」
を考えます。
たとえば、
「Canvaを学びたい」
のではなく、
自分でチラシを作れるようになりたい。
「ChatGPTを学びたい」
のではなく、
仕事を早く終わらせたい。
「Instagram運用を学びたい」
のではなく、
お客さんに知ってもらいたい。
手段と結果を分けて考えるだけで、商品はかなり変わります。
2. 「教える」「作る」「一緒にやる」は別の商品
同じホームページでも、提供方法はいくつもあります。
教える
やり方を伝えて、自分でできるようになってもらう。
作る
必要なものをこちらが制作する。
一緒にやる
相談しながら進めて、相手にも手を動かしてもらう。
運用も任せる
公開後の更新や情報発信まで支援する。
当時の私は、
「自分でできるようになった方がいい」
と思っていました。
でも、それは私の考えです。
相手によっては、
「全部任せたい」
かもしれない。
「最初だけ作ってほしい」
かもしれない。
「一緒にやりながら覚えたい」
かもしれない。
大事なのは、
何を教えるかではなく、相手がどこまで自分でやりたいのかを見ること
なんだと思います。
3. 売れる商品でも、続けられるとは限らない
ここは、独立してから何度も考えることになりました。
商品を考えるとき、
「売れるか?」
だけ見てしまうと危ない。
たとえば、
1万円の商品が売れる。
それだけなら悪くありません。
でも、
1回に何人まで対応できる?
月に何回提供できる?
毎回どれだけ集客が必要?
準備時間は?
サポート時間は?
その働き方を1年続けられる?
まで考えたら、話が変わることがあります。
高単価だから良い、低単価だから悪い、という単純な話でもありません。
自動化できるなら、1万円の商品でも十分成立するかもしれない。
大人数に提供できるなら、それでもいい。
逆に、高単価でも毎回大量の準備が必要なら疲弊するかもしれません。
大事なのは、
「売れた」ではなく、「この形で続けられるか」
を見ることだと思います。
ミニワーク|その商品、「売れる」だけでなく続けられる?
今売っている商品、またはこれから売ろうとしているサービスを1つ思い浮かべてください。
そして、次の質問を考えてみます。
自分が提供したいものは何?
お客さんが本当に欲しい結果は何?
お客さんは「学びたい」のか「やってほしい」のか?
「教える・作る・一緒にやる・運用支援」のどれが合う?
1回の価格はいくら?
1回で対応できる人数・件数は?
月に現実的に何回提供できる?
その人数・件数を集めるために、どれくらい集客が必要?
準備やフォローを含めて、時間はどれくらいかかる?
それでも続けたい商品になっている?
特に、
「売れたら嬉しい商品」ではなく、「売れ続けても困らない商品か」
を考えてみるといいと思います。
売れたら忙しすぎて困る商品は、事業としては結構危険です。
ターゲットを変えれば、売れたかもしれない
もう一つ。
あのWordPress講座は、時代が少し違ったら、もっと売れた可能性もあると思っています。
当時は、講座を開くなら自分で人を集めて、その場で教える、という形が中心でした。
今ならUdemyのような動画講座プラットフォームもあり、一度作った教材を繰り返し届ける選択肢もあります。
同じ1万円の商品でも、提供方法が違えば事業性はかなり変わります。
ターゲットを、
「小規模事業者」
ではなく、
「Web制作を仕事にしたい人」
に変えていたら、違う展開もあったかもしれません。
でも、私はそちらに行きませんでした。
私がやりたかったのは、
地方の小さな会社を支援すること
だったからです。
だから、
「売れる市場があるなら、そこへ行けばいい」
とも思っていません。
誰に届けたいのか。
自分は誰の役に立ちたいのか。
これも、商品を考えるうえで大事な条件だと思っています。
振り返ると、商品を変えたというより、形を変えた
WordPress講座をやめて、ホームページ制作を始めた。
表面的には、商品を変えたように見えます。
でも、目的はあまり変わっていません。
地方の小さな会社が、自社のことを伝えやすくなるようにしたい。
ITで困ることを減らしたい。
少しでも仕事がやりやすくなるようにしたい。
その目的は同じでした。
ただ、
「教える」という形が合わなかったから、「作る」に変えた。
それだけだったのかもしれません。
今でも、商品を考えるときには、
「自分のやりたいことを捨てる」
より、
「目的はそのままで、提供方法を変えられないか」
を考えるようにしています。
次は、営業ができなかった話
ホームページ制作を始める前後、もう一つ困っていたことがありました。
どうやって仕事を取るのか。
独立前後の手探りの時期に、社労士向けのサービスを考えてDMを送ったり、飛び込み営業をしたこともあります。
ただ、飛び込み営業では、
インターホンを押して、
留守だとホッとしていました。
営業なんて、新卒の就活でも避けていた職種です。
独立して切羽詰まったからといって、急に得意になるわけではありませんでした。
そこで私は、
「こちらから売り込みに行くのが苦手なら、必要な人に見つけてもらえる仕組みを作ろう」
と考えるようになります。
次は、
営業が苦手だった私が、Web集客を選んだ話
を書こうと思います。
