土地探しは、理想と現実のバランス。1年探し続けた道半ばの記録。
田舎に移住した理由のひとつは、自分たちの家を建てたかったから。
眺めが良くて、自然に囲まれた場所。家庭菜園をして、その日に収穫した野菜でご飯を作る。
そんな暮らしを想像していた。
私たちにとって「家」は特別なものだ。
日々を癒し、暮らしを心地よくしてくれる場所。だから妥協したくないし、焦りたくもない。
けれど、土地勘もここに住むというリアルも、何も知らない。新着情報を見て訪れてみるけれど、実態がよくわからない。
そんなところから始まった土地探し。始めて1年、まだ道半ばのキロクを残しておこうと思う。
ある不動産屋さんとの出会い
良い土地には出会えないのではないか。
そんなふうに思っていた矢先のこと。
気になる土地を調べてくれるという不動産屋さんに話を聞きに行った。
「この辺りは好条件の土地が少ないですよね。でも、待っていればいずれは出ますよ。」
気になる土地を複数のエリアにわたって相談したところ、前向きな言葉が返ってきたのだ。
「まだHPに出していないんですけどね、その辺りに土地が出る予定です。」
その場で教えてもらった新着物件。こうやって情報が出る前に埋まっていくのか。驚きつつも嬉しい気持ちを抱えて、すぐ見に行くことにした。
私が好きな、林に囲まれた木の温もりを感じるエリアだった。定住者もおり、適度に開けていて、アクセスもいい。
気になるのは、太陽側に林があり、早く日が沈むこと。冬は寒さが厳しくなるだろう。
太陽は生活の軸になる。今の家は、太陽がサンサンと降り注ぐ。その恩恵を日々実感しているからこそ、悩みつつ諦めることになりそうだ。
細かい情報をシェアしてもらったら、また見に行こうか。そんな温度感だった。
それから数日後、別の不動産で気になっていた土地にも出かけてみた。
眺めが良くて、畑つきで、予算にも収まる。
好きに手を入れる楽しさが感じられそうで、思わず「ここだ」と思いかけた。
ただ、形が三角形に近い細長い変形地で、建坪率を考えると理想の家は建てられないかもしれない。しかも担当の不動産屋さんが、なんだか心許ない。
100%ベストな土地に出会えるなんて、奇跡というより、現実に存在しないのかもしれない。
手元に残った「100%ベストではないけれど、良さを語れる土地」リスト。諦める理由を見つけに行くような気持ちで、ふらりと見に行くことを繰り返した。
そんなある日、最初に候補から外した物件に、また足を向けてみると、目の前の林の一部が切り開かれて、景観が変わっていた。
どうやら、小規模ながら二階建ての宿や商業施設ができるらしい。なるほど、そういう変化が起きるのか。木漏れ日が差し込むようになったけれど、南アルプスは望めなくなりそうだ。
実はその裏手にも土地がある。木を伐採すれば太陽も入りそう。周りに何かが建つ可能性はあるが、裏手の林は持ち主の意向で守られそう。
変化はどの土地を選んでも起きる。大切なのは、その変化を今、想像できるかどうかだと思った。
意を決して、義理の両親にも見に来てもらった。最後の確認のつもりで。
そうしたら、「三角の土地の方がいいんじゃない?」と、想定外の展開に。私は振り出しに戻ったという事実にショックを受けた(笑)。
でも測量はまだで、図面と現地の形が微妙にずれていて、実際の形は買ってから確認することになるらしい。そんな状態でお金は出せない。
そこから話は進んでいない。
土地に詳しくなるということ
土地を見て回る、その動き出しまで半年ほどかかった気がする。
あちこち出かけて、利便性や雰囲気の良さ、日常的に人が暮らしているかどうか、気になることや大切にしたいことがなんとなく見えてきた。
けれど、ちいさな不動産が山のようにある北杜市では、それぞれの棲み分けが見えづらい。とりあえず話を聞きたくても、めぼしい土地がない限りは取り合ってもらえない。
アットホームや各社HPの更新情報を見にいっても、情報が必ずしも揃っているとは限らず、住所が載っていないのはあるあるだ。
直接問い合わせても回答スタイルはさまざま。メールで教えてくれるところもあれば、予約を取って事務所へ伺わなければいけないところもある。
それでいて、情報が表に出る前に内内で売れてしまうなんてことは割とよくあるらしい。
移住者に不利すぎる。
いくつか不動産屋さんに問い合わせて、直接話を聞きに行って、そうして少しずつ自分たちの中にデータベースが出来上がっていった。
実際に家を建ててきた人たちの話でも、結局、アットホームでの情報収集が太そうだった。肝心なのは、いつでも見て気づけるようにする、そのスピード感な気がする。
気づいたら、田舎の土地あるあるも身についてきた。水道は通っているのか、浄水か井戸か。公道か私道か、コンクリート整備か砂利か。集落なのか、移住者エリアなのか、別荘エリアなのか。木の伐採や抜根、造成が必要なのか。
整備が整っていない土地では、追加コストがかかる。条例が変わって規制が厳しくなることもある。あらゆる価格が高騰している今、そもそもの坪単価も5年前とは別物だ。眺望の良いエリアともなれば、さらに跳ね上がる。
判断軸が、少しずつだけど見えてきた。
それでもまだ、理想の土地には出会えていない。
理想と現実のギャップ
今も、想像もしていなかった景色に出会うことがある。でも標高が合わなかったり、自治会に入らなければいけなかったり。
移住者が多くて古いしきたりが薄いエリアだとなお嬉しい、なんてことも考え始めると、落とし所を見つけるのがなかなか難しい。
現実と理想のギャップを埋めるのか。
それとも、大きな買い物だからこそ、理想を突き詰めるのか。
のらりくらり考えたり忘れたりを繰り返しながら、探し続けている。
