Non-Roster-Invitees
毎年、MLB各球団のプレビューをブログに書いている。調べてみたら2013年からなので14年目になる。Baseball Referenceの各チームの選手成績を並べて、MLB公式サイトでその選手の異動を確認して、選手の名前と記録を移していくわけだ。重複はあるが、30球団で投手は約1100人、野手は700人、彼らがどの球団に移籍したかを追いかけていく。3月初旬から毎年始めるが、今年のようにWBCがあると更新が進まないので、開幕にずれ込むことになる。一人でやっているのだから、これは仕方ないと思っている。
メジャー、マイナー
毎年、MLBでプレーする選手は1800人を超すが、彼らはステイタスによって、扱いが大きく違っている。
一番ステイタスが高いのがアクティブだ。MLBの公式戦に常時出場が可能な選手で、その上限は26人と決まっている(9月1日以降は28人に拡大される)。NPBからポスティングでやってくる選手は、ほとんどがアクティブロースター(名簿)に載っている。この中でも、複数年契約を結んでいるのは、スター選手と言ってよい。
1球団の選手数は「40人」と決まっている。26人のアクティブロースターの選手以外は「40人枠」ということになる。ここまでの選手が「メジャーリーガー」だ。40人枠の選手は、26人のアクティブロースターの選手が故障したり、移籍したり、降格すると、その補充として昇格する。
MLBの場合、マイナーリーグの球団は、別のチーム(企業体)なので、AAA以下のマイナーリーガーは、メジャーリーガーとは別の扱いになる。とはいっても、MLB球団傘下のマイナー球団の選手は、MLB球団が契約して各球団に派遣しているから、マイナーリーガーでもMLB球団と契約している。

キャンプに招待される
毎年、シーズン終了とともにFA年限に達した選手は自動的にFAになる。NPBのようにFA宣言はない。球団が契約更新しない限り、選手はすべてFAになり、プレーするチームを探すことになる。
めでたく他の球団とメジャー契約を結んで移籍する選手もいるが、そうでない選手もいる。春までに契約が決まらないと、彼らは次のプレー先を求めて各球団の春季キャンプ地にいくことになる。球団が見込みがあると判断した選手はマイナー契約をしたうえで「キャンプ招待選手(Non-Roster-Invitee=NRI)」として、春季キャンプに参加する。オープン戦(スプリングトレーニング)を通じて目立った活躍をすれば、アクティブロースター入りをすることもあるし、40人枠で契約することもある。またマイナー契約のまま入団する選手もいる。
しかしマイナーリーグにも「定員」がある。マイナーから這い上がろうとする若手選手がひしめいているから「メジャーでないならマイナー契約でもいいです」というわけにはいけない。
NRIになっている選手の多くは、FA年限を過ぎて、それなりの「評価」がついてしまっている選手が多いから、その扱いはなかなか厳しい。春季キャンプ中にNRIの身分のまま、球団を渡り歩く選手もいる。
「MLBプレビュー」の表から
とりわけNRIに多いのは「救援投手」だ。どの球団でも、救援投手はクローザーなど一部を除いて「使い捨て」であり、シーズンが始まってもどんどん移籍を繰り返す。
毎年私が作っている「MLBプレビュー」の表から、とりわけ人遣いが荒いニューヨーク・メッツの投手の異動表を見てみよう。

左側がメッツで2025年に1試合でも投げた投手の成績、えんじ色はシーズン中やオフに移籍、退団した投手。右側が2026年の陣容、ブルーは新規に加入した投手。
一番上の6人は先発投手、千賀滉大の名前もあるが、25年の顔ぶれから変わったのはグリフィン・キャニングがパドレスに移籍し、ブリュワーズのエースのフレディ・ペラルタが移籍しただけ。
次のグループは救援投手としてシーズンを通して活躍した投手。5人いたが、このうち3人が移籍し、26年は5人の投手が他球団から新たに加わっている。
そして最下段、ぶわーっとたくさんいるのが、シーズン中にとっかえひっかえメッツのマウンドで投げた投手だ。ほとんどが救援投手。メッツは昨年46人の投手が投げたが、1試合でも先発で投げたのは17人だけ、あとの29人は救援投手だった。
最下段の「その他大勢の投手」は、昨年、35人いたが、このうち22人が昨年中にチームを離れている。移籍先の球団名の略称を選手名の左に小さく書いているが、メジャー契約で移籍するのはごくわずか。多くはNRIか、40人枠だ。球団名がない投手はFAのまま、行き場がない投手だ。

NRIはもうない
MLB球団の公式サイトでは、Rosterというコーナーがあり、ここで各ステイタスの選手のリストを出している。今日の時点のニューヨーク・メッツのロースター。

項目の中にはNON-ROSTERがあるが、リストはもうない。NRIは春季キャンプまでのステイタスであり、シーズンが始まるとなくなってしまう。
NRIだった選手は、どこかの球団とマイナー契約するか、メキシカンリーグなど独立リーグと契約するか、海外のチームと契約するか、それとも引退するかだ。NPBに移籍する選手は「極めてラッキー」だといって良い。
日米の厳しさの差
毎年、この表を作りながらしみじみ思うのは、MLBの競争環境の過酷さだ。
これに比べれば、NPBの選手は「会社に就職した」みたいで生ぬるいと思う。
とりわけ救援投手は、複数年契約は少なく、1年でも不振に陥ればFAになることも珍しくない。またチーム事情によって、シーズン中に移籍を繰り返す選手もいる。25年は3球団で投げた投手が2人いた。
先発投手と異なり、故障をすれば即FAということも多い。
そんな過酷な活況で生存競争を生き残ってきたMLBの救援投手はまさに「筋金入り」だ。
今回のWBCで日本が敗退したのは「救援投手の差」だといわれたが、NRIなど過酷な環境で、必死に生きてきた救援投手とNPBの救援投手は、育つ環境が違いすぎるというべきではないか。

