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量産される「歴史的記録」

特に大谷翔平がMLBで「異常な活躍」をし始めてから、アメリカでも日本でも「歴史的な記録」をやたらと量産し始めた。アメリカには記録専門サイトがたくさんあるし、日々膨大な記録を発表している。そういうサイトのアナリストも大谷の「歴史的記録」は受けるからどんどん発表するし、メディア記者もそれに乗っかって、今まで聞いたことのないような「歴史的記録」を日々発表し始めたのだ。

「歴史的記録」の作り方

いくつかのテクニックを使えば、この手の「歴史的記録」を作るのは割と簡単だ。
1「任意に期間を区切る」
「〇〇選手のこの記録は、1997年以降に限定すれば史上1位」みたいな。なぜ1997年で切るのか?多くの場合、それ以前にはもっとすごい記録があるからだ。それを隠して大記録を作るわけだ。
2「属性を絞り込む」
MLB全選手とか、ナ・リーグの選手のうちで、とかいうカテゴリーではなく「日本人選手で」とか「アジア人で」とか「どこどこ出身で」とか「右投げ左打ちで」とかいろいろ属性を絞ると母数が減って、〇〇選手の記録が上位に来やすくなる。このやり方を使えば、筒香嘉智は「和歌山県出身で最も多くの本塁打を打ったメジャーリーガー」になってしまう。
3「数字を変なところで切る」
「〇〇年で、129試合以上出場した選手の中では最高打率」とか「117イニング以上投げた防御率は史上1位」とか。持ち上げたい記録が、たまたまトップに来そうなところで試合数やイニング数などの数字を区切って記録を「捏造」するわけだ。

一般の人は記録に詳しくないからこういうテクニックを駆使した記録を「へー、そうなんだ」と思う。まさかメディアの人間が、記録を捏ね上げているとは思わないから、うかうかと信じて「大谷翔平は毎日記録を作っているんだ」と思ってしまう。

出来立てほやほやの大記録

昨年、大谷翔平で作られたこの手の記録をいくつか挙げてみよう
・マウンドの高さが低くなった1969年以降、投手大谷翔平は得点圏に走者を置いた状況での「被長打率」は、歴代トップの.292を記録。
・打者大谷翔平は、得点圏に走者を置いた状況での「長打率」歴代2位の.602を記録
・レギュラーシーズンとポストシーズン通じて初めて、左右の打者から5つずつ三振を奪い、同試合で3本塁打を記録
・史上初めて、先発した試合で10奪三振以上と複数本塁打を同時にキャリアで2回達成

今日、村上宗隆は15号本塁打を打ったが、
8カード連続でカード初戦で本塁打。これは7カード連続で初戦に本塁打を放った通算504本塁打のエディ・マレーを抜くメジャー史上初の快挙
だそうな。今までだーれもそんなこと言ってなかったと思うが、記者がデータベースをひっくり返してこんな記録を発掘しているわけだ。

メディアも影響される?

そうした「歴史的記録のお手軽量産」が、世間の野球ファンを騒がせるのは、私はよくないと思うが、それだけではすまなくて、どうやらこれらの「大記録」は、MLBで日々取材活動をする記者、ジャーナリストまでもが影響を受けつつあるように思う。
3、4月のナ・リーグの主要な投手の成績

規定投球回数以上の主要な15投手の成績を並べた。2年連続のサイ・ヤング賞投手、スキーンズが相変わらずの成績を残しているし、ブレーブスのエルダー、セール、ジャイアンツのルップは5勝、ドジャースでもグラスノー、山本がランキクイン。今永も好調だ。
大谷は防御率は0点台とすごい成績ではあるが。
これまでMLBで0点台でフィニッシュした投手は1914年のレッドソックス、ダッチ・レナードの0.96だけだ。また大記録を作ることになるが、ただしそれは「規定投球回数」をクリアすれば、だ。
3,4月の時点で大谷は規定投球回数未達だった。それでもすごい記録ではあるが、本来は「参考記録」のはずだ。

大谷もうれしくない

しかし先月、大谷翔平は投手の月間MVPを獲得した。
これについてデータ会社は
開幕から5登板連続で「6回以上」「被安打5以下」「自責1以下」「被本塁打0」をクリアした史上初の投手
と発表した。これも「恣意的に作られた記録」のうちだと思うが、こうした「記録報道」が、記者投票に影響したのではないか。

大谷翔平は、本気でサイ・ヤング賞を狙っている。彼は「大谷人気に押し上げられての受賞」などまっぴらごめんのはずだ。
だから「長いイニング」を投げて規定投球回数をクリアしたいという執念を見せている。
メディアの大騒ぎが、権威ある賞の行方を左右するのは問題だと思うし、そうした受賞を大谷本人も喜ばないはずだ。

記録というのはそんなに易々とつくれるものではない。我々は「記録」に関してもリテラシーを磨くべきだと思う。


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