見出し画像

【でん子の冒険 3762話 シリコンの秘密 No.27 作る費用のアップ】 20260407 火曜

先週、「次は我々の出番」とばかりに蕾を膨らませていた通勤路のツツジが、今朝ついに満開を迎え、やさしい雨に包まれて咲き誇っていました。
【でん子の冒険 3762話 シリコンの秘密 No.27 作る費用のアップ】 20260407 火曜
おじいさんは、苦肉の策の1つ目について話し始めました。
「一つ目は、『費用(コスト)』の問題なんだよ まず作る費用の話をしよう」

「えー? 前に『写真の技術を使うから、一瞬でパシャッと作れる』って言っていたよね? それなら、サイズが大きくなっても関係ないんじゃない?」
アリスは不思議そうです。

「それは『チップ1枚の中の部品』を作る時の話だね。実は、そのチップ自体も、大きなシリコンの円盤(シリコンウェハ)からたくさん切り出されるんだ」

「へえ! じゃあ、その大きな円盤全体に、一発でパシャッと写真を撮るの?」

「いや、実際にはウェハの上を少しずつ移動しながら『パシャ、パシャ、パシャ』と高速連写して、少しずつスタンプのように設計図を焼き付けていくんだ。ステップ(移動)しながら写していくから、『ステッパー』という装置を使っているんだよ」
「なるほど、隣に繰り返し同じスタンプをおしていくスタンプラリーみたいに同時にたくさん作っていくんだね」

「その通り。そのあとに穴を開けたり、膜を付けたりする作業はウェハ全体で一気にやるから、手間は同じなんだ。
ということは、1枚のウェハから『よりたくさんのチップ』が取れる方が……?」

「お得だね!」

「そう。1980年代のウェハは直径10センチ(4インチ)くらいだった。そこから、当時の簡単なチップ(キルビーの工作の2〜3倍の大きさで、約20〜30平方ミリメートル)を切り出すとする。さて、何個くらい取れると思う?」
アリスは頭の中で計算しました。
「えーと、円の面積は『半径×半径×3.14』だよね。半径は5センチだから……『5 × 5 × 3.14』で、およそ75平方センチメートルかな?」
「いいねー! そういうアバウトな計算ができるのは素晴らしいよ。だいたいの関係を知るためだからね」

「おじいちゃんの性格に合わせてあげてるんだよ」
アリスがニヤリと笑いました。

「…………」
おじいさんは言葉に詰まってしまいましたが、気を取り直していると、

「黙ってて……。えーと、ミリとセンチを間違えないように計算すると、だいたい1枚のウェハから200〜400個くらい取れる。一度にそんなに!? 1枚からそれだけ取れるなら、立派な大量生産だね!」

「そうなんだ。だから、膜を付けたり、パシャパシャしたり、溶かしたり洗ったりを何十回、何百回と繰り返しても、1個あたりの価格はものすごく安くなるんだよ。しかも工場では大量のウウェハ次から次へと処理していく」

「そうか! だから複雑なチップが安く作れて、スマホの中にもいっぱい入っているんだね」

「ところがだよ。もしチップのサイズを『10倍』に大きくしてしまったら、同じ大きさのウェーハからは、今までの10分の1の数しか取れなくなってしまう。ということは……?」

「……あっ! 1個あたりの値段が10倍に跳ね上がっちゃう!」

「その通り! だから、チップのサイズを大きくするのは、製造の費用(コスト)の赤字に直結する。本当は絶対にやりたくない『苦肉の策』だったんだよ」

いいなと思ったら応援しよう!