なんのはなしですか── Paradigm Shift《その138》燕の糞は、読書を知っていた。
燕の巣を見上げた。
もう雛たちは巣立ったあとだった。
その真下には、
白い糞がこんもりと積み上がっている。
まるで小さなピラミッドのようだった。
不思議なことに、
汚いとは感じなかった。
むしろ、
「ああ、この子たちはここで育ったんだな」
という時間の跡に見えた。
ふと思った。
もし、この糞を
リバースエンジニアリングしたら
どうなるのだろう🧐💭
雛は生まれたばかりの頃、
まだ餌から十分に栄養を
濾し取ることができない。
だから、ピラミッドの底の糞には、
親鳥が運んできた虫や生き物の姿が、
かなり高い精度で残っているのではないか。
成長するにつれて、
雛は少しずつ栄養を吸収する力を
身につけていく。
その分だけ、
糞に残る栄養は減っていく。
つまり、
ピラミッドの底には「未熟さ」があり、
頂点には「成長」が積み重なっている。
そんな景色がボクには見えた。
そして、この構造は、
読書にもよく似ている気がした。
本を読み始めたばかりの頃の読者は、
まだ多くを濾し取れない。
言葉は目の前を通り過ぎていくけれど、
受け取れるものは、それほど多くない。
けれど読み進めるうちに、
知識や経験が静かに積み重なり、
読者の「濾し取る力」は育っていく。
だから、
本当に上手い作家は、
一番伝えたいことを最初には置かない。
読者の濾し取る力が育つ、
そのタイミングを待つ。
そして、
「あ、そういうことだったのか。」
その小さなカイロス💧の瞬間に、
そっと自分の思想を忍ばせる。
ページをめくる読者もまた、
燕の雛と同じように育っているのだ。
燕の巣の下に積もった白い糞は、
命の痕跡であると同時に、
成長の記録でもあった。
そんなことを考えながら、
しばらく空になった巣を見上げていた。
……なんのはなしですか?🪺🔜🪹🔚
《A Drop Remains.💧》
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