【ショートショート】第二話『未読』
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──朝。
いつものようにスマホを見る。
友人とのチャット画面。
昨日送ったメッセージが、
まだそこに残っていた。
「未読」
少し違和感があった。
彼は毎日、
必ず返事をくれる。
忙しい日でも、
短いスタンプくらいは返してくる。
だから珍しいなと思った。
でも。
それ以上は考えなかった。
スマホの不具合かもしれない。
アプリの更新が遅れているのかもしれない。
最近、少し変なことが続いている。
時計が数秒ズレたり。
パソコンの保存日時が、
一瞬だけ違う日付になったり。
小さな違和感。
誰かに話すほどではない。
そんな程度。
──そして夜。
電話が鳴った。
友人だった。
「ごめん。昨日のメッセージさ」
開口一番、
彼は言った。
「ちゃんと読んでたんだけど、
返事するタイミング逃しちゃって」
一瞬、意味が分からなかった。
「え?」
「いや、昨日送ってくれたやつ。面白かったよ」
彼は笑った。
「時間って本当に同じ速さで流れてるのかな、
ってやつ」
背筋が少し伸びた。
読んでいる。
やっぱり。
彼は昨日、
読んでいた。
でも。
スマホの画面を見る。
そこにはまだ、
「未読」の文字。
「……」
何かがおかしい。
友人は続ける。
「でもさ、不思議だよな」
「何が?」
「昨日読んだ時も思ったけど……」
その瞬間。
スマホの画面が変わった。
ゆっくり。
本当にゆっくり。
まるで、
止まっていた時計が動き出すように。
「未読」
が、
「既読」
へ変わった。
友人は、
まだ電話で話している。
昨日読んだはずのメッセージが。
今。
読まれたことになった。
「ねえ」
友人の声。
「聞いてる?」
「ああ……」
返事をしながら、
画面を見る。
既読。
ただの二文字。
でも。
その二文字は、
昨日と今日の間にできた、
小さな裂け目のように見えた。
もし。
記録だけが遅れて届いているなら。
今、目の前にある現実も。
本当は少し前のものなのかもしれない。
窓の外を見る。
いつもの夜。
いつもの街。
何も変わっていない。
ただ。
自分の知らないところで。
時間は少しだけ、
迷子になっていた。
《A Drop Remains.💧》
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