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第3話 サバの塩焼き

ぽんぽこ物語

あたしの住んでいる町のはずれに、とっても美味しいお弁当屋さんができました。
「腹つづみ ぽんぽこ」という名前のお弁当屋さんです。

チーフ(店主)の人柄と、手作りお弁当のやさしい美味しさに魅かれて集まってくるお客さんたちとの心温まる物語を、そっとお聞かせします。




入りづらいお弁当屋さん

腹つづみぽんぽこは、給食をベースにしたお弁当を提供するお弁当屋さんです。
チーフがずっと給食をつくってきたので、給食のテイクアウトをコンセプトにしたといいますが、それは説明されないとよく理解できません。

ですから、看板に「お茶の間 給食 販売中」とあるのは、はじめて見る人にはナゾとしか言いようがありません。

加えて、ごはんの種類と、主菜、副菜を選ぶシステムも説明されないとわかりません。
そのため、店頭に出されたメニューボードを見て、躊躇してお店の前で立ち往生しているお客さんが少なくありません。

そんなときはあたしが、「よかったら中へどうぞ」と店内に案内します。

あたしもお客さんで、お店の人ではないのですが、ぽんぽこの第一号のお客さんで、ぽんぽこのファンなので全然問題ありません。


「ねえ、チーフ、あの子また来てますよ。この間も、お店の中じっと見ていたんです。」

あたしはチーフ(あ、チーフというのは、ぽんぽこの店主のことです)にお店の外から中を見ている少年のことを伝えました。

「ほんとだ。声をかけてみようか。」
チーフはそう言うと、キッチンから出てきて、お店のドアをあけて男の子に声をかけました。

「こんにちは。何か気になるものがあったかな?」

すると、男の子はくるりと後ろを向くと、一目散に駆け出しました。
しかし、慌てたために、石につまづいて転んでしまいました。
そして、手に持っていたレジ袋にいっぱいに入っていたカップラーメンが外に飛び出してしまいました。

チーフは、男の子に手を貸して抱え起こし「大丈夫?ケガはない?」と聞きました。
少年は首を横に降りました。
唇を噛み締めて、泣き出したいのを我慢している健気な姿を見て、チーフは、
「キミは強い子だね。」
と言って微笑むと、飛び出してしまったカップラーメンを拾ってレジ袋の中に戻しました。
そして、「カップラーメンが好きなんだね。」
と言って、レジ袋を少年の手に渡しました。

「さっきはお店の中の何を見ていたの?」
やはりお店から出て、男の子の側にいたあたしがそうたずねると、少年は、
「あれ。」と言ってお店の中を指差しました。

「ああ、揚げパンか。揚げパンは給食によく出るよね。美味しいよね。」
とチーフが言いました。
「何年生?」とあたしが聞くと、男の子は「3年生」と答えました。

チーフはお店に戻って、揚げパンを2つビニール袋に入れて戻ってきました。
「これ、とってもおいしいから特別にキミにあげるよ。お家に帰って、お母さんが食べてもいいよって言ったら食べてね。※」と言いました。
(※食品アレルギーの心配があるとたいへんなので保護者の許可を得てから食べてもらうようにしています)

そう、ぽんぽこは給食テイクアウトのお店なので、お弁当の他に揚げパンも販売しているのです。


栄養満点のお弁当はいかがですか?

週末、揚げパンをあげた男の子がお母さんと一緒にぽんぽこにやってきました。

「この間は、揚げパンをいただきまして、ありがとうございました。とっても美味しくて、とっても懐かしかったです。」
お母さんはそう言って頭を下げました。
「この子がまた揚げパンが食べたいというものですから、お礼もお伝えしたかったので、今日は買いに来ました。」

「それはそれは、とてもうれしいです。揚げパンも美味しいですがお弁当も美味しいですよ。お弁当はいかがですか?うちのおかずは、全部手づくりなんです。」
とチーフが言いました。

「この間、息子さんがカップラーメンをいっぱい買ってきたのを見ました。カップラーメンが好きなんだなと思いましたが、成長期ですから、栄養面でも、味覚をちゃんと発達させるうえでも、手をかけた料理を食べることも大切だと思いますよ。あ、なんか、余計なことを言って、すいません。気を悪くしたらごめんなさい。」

「いえ、本当にその通りだと思います。この子のためにちゃんとしたご飯をつくってあげなくちゃと思うんですが、なかなかその時間がなくて。言い訳にしかなりませんが、私、一人でこの子を育てているんです。忙しい仕事なので帰りが遅くなることも多くて、それで、この子の夕飯はいつもカップラーメンとコンビニのお弁当になってしまっているんです。」
お母さんはそう言うと、息子の手をぎゅっと握りしめて、うつむきました。

「お母さん、一人で頑張って育てているなんてすごいですね!じゃあボクは、お母さんに感謝しなくちゃな!」
と少年に向かって語りかけました。

少年はこっくりとうなずきました。

「だけど、カラダが資本だから、お母さんも息子さんも、栄養満点の美味しいもの食べなくちゃダメですよ。今日ははじめてのご来店なので、おかずを少しサービスしますよ。」
と言って、微笑みました。

「今日はお魚が美味しいですよ。お魚とか、ふだんあまり食べないんじゃないかな?今週はサバの塩焼き。サバは血液をサラサラにして脳の働きを活発にするEPAやDHAやビタミン類が豊富で、頭も良くなるし、身体にとってもいいんですよ。」

親子はサバの塩焼きを主菜にしたお弁当を二つ買っていきました。


お弁当の定期購入サービス

それから、少年とお母さんの親子は週4回※の定期購入をしてくれるようになりました。
ぽんぽこには日替わり定期購入の仕組みもあるんです。
(※回数はご相談ください)

メニューはチーフのお任せで、栄養面を考えて美味しくてバランスの良いお弁当をコーディネートしてくれます。

通常のお弁当は使い捨てのプラ容器ですが、定期購入は洗って使えるハード容器を使用しています。
夕方になると男の子がお弁当を取りに来ます。
そのときに、食べ終わった前回のハード容器を持ってきてもらっています。

プラごみ削減で環境にもやさしいですし、容器分を料金に還元しているので、経済的にもやさしいのです。
しかも、スープがサービスで付きます。
支払いは前払い※ですが、都合に合わせて曜日の振替もできます。
(※支払い方法はご相談ください)

「たぬきのおじさん、これ。」
最初に会ったときよりも、だいぶ顔色が良くなった少年が、前回のお弁当の容器をチーフに差し出します。
「おいおい、たぬきのおじさんはやめてくれよ。」
と苦笑いしながら容器を受け取り、蓋をあけると、中にメッセージカードが入っていました。

たぬきのおじさん お弁当とってもおいしかったよ。
さかなを食べると、からだがじょうぶになって、はやく走れるようになるよ
って書いてあったけど、ぼくは本当にはやく走れて、リレーに選ばれました。次のお弁当も楽しみにしています。

チーフが毎回お弁当に添えている、メッセージカードへの返信でした。


最後までお読みいただきありがとうございました。
来週もご来店お待ちしております。

※ぽんぽこ物語はフィクションです。架空の人物、団体が登場しますが、ぽんぽこの料理の美味しさは本物です♡

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