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額に入った夕暮れ (ショートショート)

 私は都内の勤務医。今日は私の誕生日なので定刻に退勤するつもりだったが大事故発生のため救急車が患者をピストン輸送してくるという状態になった。そのまま当直になるだろう。隙を見てお手洗いに立つ。ろう下の窓を通して西日を感じた。まもなく長い夜が始まるだろう。思わず溜息がでて窓枠に手をかけた。
 見上げると故郷の山が見えた。

 ?

 それは実家の部屋から見える景色だ。間違いなく。しかし、ここから少なくとも八百キロはあるはずだ。胸の中に覚えのある声が響いてきた。
「四十五歳のお誕生日おめでとう。毎日働いていて偉いね。わしらはいつでもメイちゃんを応援しているよ」
「もしかして、ひいばあちゃん?」
「思い出してくれてありがとう」
 それは一瞬で元の無味乾燥な高層建築が林立している景色に戻った。私は額縁のように窓の桟に両手をかかげて微笑む。
「幻覚としても、素敵な誕生日プレゼントをもらった気分だなあ」
 そして私は西日を背中に受け救急室に駆け戻る。




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