⚪️掌編小説|友愛
ここは人生二周目の者だけが入学を許可される。通称「人生二周目学園」である。
ぼくは高等部一年、アキラ。
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わたしは特待生のマリエ。
本学の生徒会長(候補)にしてこの物語のヒロイン。属性は黒髪、黒タイツ、秀才、やや巨乳。
未来予知精度は66.6%以上。
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次期会長は特待生のマリエさんが既定路線らしい。噂では既に十六周目だという。知識量、人生経験において彼女の右に出るものはいない。
副会長は指名制なので希望者は会長候補と事前に面談を重ねておく必要がある。と言っても、会長は事実上マリエさん一択なので、彼女の周りは常に取り巻きで一杯ということになる。
ぼくは生徒会活動には何の興味もない。けれどマリエさんのことは気になっている。何故ならそう、ドストライクなのだ。
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今回はアキラくんにしよう。
特にこれといった理由はないけれど。基本的には誰でも良いのだけれど。結局のところこれですべては丸く収まるだろう。
わたし以外はみんな二周目。なので彼らが前世で何をしていたのか、何処にいたのか、わたしは知る由もない。彼らはこの学園にいなかったのだから。
つまり誰を選んでもわたしには未知の世界。そのことが、わたしをこれ以上ないほどワクワクさせる。
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さてどうやってマリエさんに近づこう、などと思案していた矢先である。呼び出しが掛かった。取り巻きのひとりがぼくのところに来て、マリエさんが構内のカフェテリアで待っていると言う。
ぼくはアイスコーヒー、マリエさんはレモンスカッシュ。そしてぼくを呼びに来た「取り巻き女」も何故か同席するらしく、牛丼を頼んでいる。「ねぎ多めで。えへへ。お腹すいちゃって」
「ごめんなさいね、お昼寝の時間だったでしょ?」
「昼寝は、しません」
「やだあ、どうして敬語?」
「なんとなく」
「まあ、いいわ、いくつか質問させて?」
「はい。なんなりと」
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恋をしている。わたしに? もしそうなら、この選択はとても辛いものになるわね。
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マリエさんの質問攻めは、その日だけでは終わらなかった。その度にいつも同じ「取り巻き女」が呼びに来るのだけれど、どうしてだろう、ぼくの担当なのかな。
面談の場所は日によって異なり、ライブラリーの談話室や、ネモフィラガーデンにあるピクニックテーブル、サンルームのデッキチェアーなど。
質問内容も多岐に渡り、かつランダムで、意図が不明なものも多い。まるでCIAとかMI6が採用しているような、分からないけど、とにかく変な質問ばかりだった。
「次の言葉から連想するものを答えて?」
「はい」
「新幹線」
「大爆破」
「長靴」
「をはいた猫」
「葉桜」
「の季節に君を想うということ」
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あたしは「取り巻き女」のユカリ。
生徒会副会長の座が欲しくてそうしてる訳じゃない。それはマリエさんも承知の上。
アキラくんは覚えていないと思うけど、彼をこの学園で見つけたとき、ああ、ほんとにいたんだって、嬉しかった。だってあたしはそのためにこの世界にいるのだから。
属性は金髪、白ニーソ、天然、骨密度高め。
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わたしの心は決まった。
アキラくんを副会長に指名する。でもその前に、彼には伝えておかなければならないことがある。
「知っているかもしれないけれど、一応、言っておくね。この学園では、生徒会長と副会長は『友愛の誓い』を立てる決まりなの。この誓いは、在学中はもとより、生涯にわたって守らなければならない極めて厳粛なもので、その掟によれば、わたしたちは性的な接触を持つことも、恋愛感情を持つことすら決して許されない」
「脱落者はいないのですか?」
「基本的にはいないと言って良いでしょうね。禁忌を犯した時点で、その人には三周目に飛んでもらうから。言ってる意味は分かるわよね?」
「はい」
「だからよく考えてほしい。あなたがそれで良ければ、わたしはあなたを副会長に指名する。そして、生涯にわたって、あなたを友人として愛します」
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会長選挙まではまだ時間がある。
だから自分自身の欲望がどこにあるか、あるいはどうやって世界と折り合いをつけるべきか、すなわちぼくが生きる意味について、考える時間はまだ少し残っている。
とはいえ、いつまでも答えを先延ばしにするわけにはいかない。マリエさんはぼくの返事を待ってくれている。
「マリエさんから聞いた?」
「誓いのこと?」
「どうするの?」
「まだよく分からないんだ」
「きみが副会長になろうとなるまいとマリエさんは恋人を作らないよ?」
「どうして分かるの?」
「噂だけどね、マリエさんに恋人は必要ないんだって。というか、恋愛を信じてないみたい。ただし結婚はするって」
「どういうこと?」
「誓いを守ったまま結婚するらしいよ。副会長とね」
「そんな!」
「ねえ、帰りにタコ焼き食べてかない?」
***
アキラくんはマリエさんを選ぶだろう。
人生十六周目の強者と結婚することの意味を知らぬ者はいない。美しく、聡明で、友愛に全てを捧げることのできる人。ただし、ちょっと狂ってる。
「あたしね、アキラくんと、セックスしたいな」
「はあ?」
「ちょっと、しー、大きな声出さないでよ」
「おまえ正気か?」
「ねえ、考えてみてよ、あんな素敵な女の人と常に一緒にいて、毎日あの香りに包まれて過ごして、なのにその花びらに触れることすらできないんだよ。性的なパートナーが必要なことは自明の理じゃん」
「おまえ歯に青のり!」
「あ、ごめん」
「ちょっと良く分からないんだけど、それって、いつの話をしてる? 十年後、それとも、今日のこと言ってる?」
「きみが『友愛の誓い』を立てたら、そのときはあたしが性的なパートナーになる。それも既定路線なんだよ。だから、まあ、それからでも遅くはないよ、でも、今なら、誓いを立てる前のセックスはもう今しか出来ないんだよ、やるなら今だよ?」
「おま、ちょっ、え?」
***
「アキラくんおはよう」
「あ、マリエさん、おはよう、ございます」
「昨日はユカリと行ったの?」
「え? いや? 行ってませんね、行ってません」
「タコ焼き」
「あ、あー、タコ焼き、タコ焼きね、はいはい、えっと、行きました」
「急ぎはしないけれど、なるべく早めに答えを頂戴ね、わたしも早く安心したいわ」
「あ、はい、分かりました」
アキラくんとなら上手くやっていけそうだわ。
ユカリもいてくれるし。あの子で良かった。前世で結ばれなかった恋だそうだから。こんな形にはなってしまうけれど、半年に一度しか会わせてあげられないけれど、それでもあの子のためだわ。
***
神の恩寵だろうか。あるいは地獄。いや、考えても仕方ない。ぼくの未来予知精度は多く見積もってせいぜい2%程度だ。二周目なんて所詮そんなものだ。飛び込んでみるしかないのだ。
十六周目の世界をこの目で見てみたい。
指名を受けよう。そして誓いを立てよう。ぼくも、あなたを、終生変わらず友人として愛してみせます。
(おわり)
🟠2822文字
#せりふ三題噺
#牛丼金髪デッキ
#長靴ネモフィラ骨
#新幹線花びらレモンスカッシュ
#アイスコーヒー葉桜昼寝
ねぎ多めで
ほんとにいたんだって
行ってませんね
やるなら今だよ
