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⚪️掌編小説|ラ・ララ

 略称「雨宿り計画」

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 雨男専用宿泊所全国一斉リノベーション計画。

 わたしはプロジェクトリーダーの雨女、湿気で前髪ぺしゃんこのアンブレラ・ララです。

 では、定刻となりましたので、これより第一回「雨宿り会議」を始めます。

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 ララさんが好きだ。

  彼女の白い腕が私の地平線のすべてでした
  ──マックス・ジャコブ(堀口大學訳)

 ララさんを愛したあの夜と、朝が。

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 これまで不要とされてきた「非常口」が、新たに建築基準法の改正により雨男専用宿泊所においても設置義務が課せられることになりました。

 この点については、雨合羽さん、説明をお願いします。

 はい。法務担当の雨合羽です。よろしくお願いします。既存の雨男専用宿泊所においては設置義務を負わないというのが大方の予想でしたが、蓋を開けてみれば、すべからくすべしとなりまして、とはいえ施行から五年間の猶予がございます。ですので、非常口の設置に関しては緊急性は低い、いくらか時間的な余裕があると、私どもは見ています。

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 裏シェルブールにある彼女のアパルトマンで、ぼくはララさんに口付けをした。

 彼女の、ヒュッと息を吸い込んだ舌は、舐めると氷菓子のように冷んやりとした。

 鼻声は甘い香り。

 ぼくはララさんの背中をまさぐり、乳房を揉んで、ドレスの裾をたくし上げると尻を掴んだ。

 下着の横から指を入れて触れた性器は、すでにどしゃ降りの雨だった。

 じゃぶじゃぶの水たまり。

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 それでは次。雨女専用宿泊施設との格差問題です。これについては、ダイバーシティ推進委員会の傘地蔵さんお願いします。

 すみません、その前に一言よろしいでしょうか。私はじつは笠地蔵なんですね、傘地蔵ではなくて。似ているようですけれど実は違うのです。ララさんの傘と私の笠は違っておりまして、おそらく棒というか、シャフトが付いているかいないか──

 そこまで詳しくは結構です。

 失礼しました。では男女格差の現状についてお話しさせていただきます。お手元の資料「グミ」と「こんにゃくゼリー」をご覧ください。

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 行為の後、ララさんはぼくに背中を向けて泣いた。

 理由もなく去来する孤独に打ち震えたり、どうしようもなく胸を掻きむしられるような焦燥を感じたり、深い絶望の淵に佇むことがぼくにだってある。

 そんなときは空っぽの涙を流す。

 ララさんの髪に口付けをして、首筋に唇を付け、丸いピンク色の肩にキスをした。

「ごめんなさい。あなたを愛してない」とララさんは言った。

 冷たい雨が降る。街灯がぼうっと浮かび上がるように白く霞んでいる。

 知ってます。もちろん。分かっています。

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 それでは時間となりましたので、第一回「雨宿り会議」はこの辺で締めたいと思います。ご参加の皆様はありがとうございました。次回、第二回会議は一週間後です。議題は業者の選定及びスケジュールの目安になりますので、項目ごとにデッドラインを設定しましょう。またドリンク持参の場合はセルフレジか自販機でお願いします。

 この会議室は次の予約が入っていますので速やかに退去してください。

「で、感想は?」

 うん。先輩に任せて正解でした、とぼくは言った。今日のところはね。上手く仕切っていました。さすがです。ありがとうございます。

 ララさん。

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 夜が明けて、雨は上がり、窓から太陽が覗き込んでぼくらの白いシーツに潜り込もうとしている。

 ララさんはまだ眠っている。

 ぼくは彼女の目蓋に口付けをして、二の腕を軽く噛んで、腋にキスをする。

 それからふたりは裸で抱き合ったまま、寝返りを打ったり寝たふりをしながら、転がって、いつまでも、いつまでもベッドの海を漂うのだった。

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 ララさんを愛したあの夜と朝が、今でもぼくの地平線のすべてなのです。

(おわり)

🟡1556文字


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