⚪️掌編小説|ノースリーブの女
この世の全ての生き物の中で、最も美しいのはノースリーブの女だということが判明した。夏。
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「夏なんだ、分かるけど」
アマネは女にしては優しい。下ネタに寛容だ、という程度の意味だけれど。
どんなネタにも一応、半歩だけ乗ったふりをしてくれる。ただし長くは続かない。あまり引っ張れない。引っ張りすぎると露骨につまらなそうな顔をして、秘技「そう言えばさ」を出して来る。
だからここは、ノースリーブの女について語るのは悪手であって、少しだけ乗っかってくれた「夏」を突破口にするのが良い。そこから改めて、爽快さを装った下ネタに行けば良いのだ。
「てか見過ぎだから」
「水着?」
「見過ぎ、なんかわたしのこの辺、見過ぎ」
「見てたかな」
「見てたよ」
まあ、見てたからその話題になったのだ。
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アマネは「ヤリごろの女」だ。そんな言葉は存在しないけれど、まあ、やりたいしやれそう、といった程度の意味だ。
そして、ようやくだけれど、一年ほど待たされたけれど、いよいよやれそうな気がしている。報われる日も近い。そんな気がする。
「あー彼氏欲しいわー」
ほら!
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アマネを初めて意識したのは去年の夏だった。
大学近くのファミレスで、数合わせのためにたまたまそこにいたおれに声をかけてきたどうでも良い男Aと、さらにどうでも良い女B、そしてアマネとおれの四人がテーブルを囲んだ。
そこでおれはウンコとチンコの違いについて語った。アマネは無論ノースリーブだった。
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男にとって下ネタはファンタジーだ。そういう筋立ての話をした。つまり、その体系の中では、ウンコとチンコは完全に等しい。そんな話だ。
女Bは顔をしかめながら「やめてよ」と言った。男Aは女Bに迎合するように「おい、今から食事だぞ」と言った。日和りやがって。バカめ。
「うちの弟もその村の住人だったわー」
アマネが退屈そうに伸びをしてみせた。
「小学生の頃ね」
わりとおっぱいがデカい。
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以来、なんとなく親しくなった。
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「夏休みはどうするの?」
「バイトかな、あ、そうそうこないだはピンチヒッターありがとね、助かったわ、あとB子と済州島行くし、インターンシップもあるし、それ以外は家族と過ごすわ、そっちは?」
「まあ、理想を言えば酒池肉林だけど」
「だろうねー」
「どんな彼氏?」
「何が?」
「彼氏が欲しいって」
「あー」
「優しい人とか言うなよ?」
「何でよ、結構じゃん、優しい人、何が悪いの?」
「典型的だろ」
「まーね、じゃあ面白い人?」
「それも典型的だけど、さっきのよりはマシ。大体さ、範囲が広すぎるんだよ、優しいにしても面白いにしても、おれだって優しいし面白いじゃん」
「まあね、そうだね」
「そうなの?」
「え。つ、つ、付き合う?」
「うん付き合う」
「いやーないかなー」
「ないのかよ!」
くそ。あと一歩だった。
***
「おれは免許合宿」
「そうなんだ、すごいじゃん」
「取ったらドライブ行こうよ」
「やっとわたしにも足が出来るのね」
「まあ、そう思ってもらって構わないけど」
「じゃあノースリーブで待っていようかしら」
「取引成立?」
「足と二の腕かー」
「だね」
「悪くない?」
「まあまあ悪くない」
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二の腕じゃなくて脇なんだけどな、とは、あえて言わなかったけれど。
なんだか色々上手くいきそうな気がしてきた。
(おわり)
🟡1360文字
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#創作お題30
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