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1984(NEW WORLD) 川柳300句

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(十二個の)赤い実だ

リチャード・ブローティガン『東京日記』

長いながい時を経て、あなたはついにこの言葉たちに辿り着く。わたしは何も言っていない。ただもの狂おしく、たださびしく、言葉に引きずられてわたしもここに辿り着いた。300句ある。何が何に対しての言葉か、もうわからない。シンプルに言うならきょうも風がつよい……。


Ⅰ.のこされ島のガム


それも怒り縞縞Tシャツを買う

母を棄てに坂をくだる時間都市

成年漫画家の盆栽を棄てた

そもそもおれはだめなやつ月に撃つ

模造銃購ふことなく星は昴

あらゆるものをそぎおとし夏木立

ピアノ分解ながい夏のはじまり

人をおそれ河馬をおそれ祖國論

無人惑星にて燃えるヴァイオリン

夏の闇田中正悟の書を読みぬ

いかずちや駄目人間の飴なめて

パニックルームひらく王権神授

平面地球におばあさんが死んだ

ジュラ紀のあとのわれにつながる怒り

死の風景クルトンがばらまかれて

マザーコンピュータの夏に夏がきた

死ぬることは植田のこと認知論

ジャムを煮て六畳に死ぬる冒険

太田胃酸の分母分子が熱い

兄妹心中ポメラニアンのこし

日記濡れて世界終末戦争

世界滅亡すごろく盤かたむき

魔群の通過レコード屋ふるえつつ

喫水線がないほうに賭ける釈迦

意識の流れ三角錐がならぶ

いるかホテルを出て心理的な夕

母娘連ればかり居る宇宙缶詰

くさいめしを喰う原子心母の午

中央銀行と牛について書く

序破急のきのうがスケキヨの戦後

行動経済学カラマーゾフ家

森田必勝の焦げつくパンケーキ

祇園軍侵攻する意味の世界

獏が獏を喰いおわりたり暗い絵

パンを蒸せ自殺未遂者の兄たれ

洗濯機へ近づく東京の猿

サルベージ計画後に神をゆるす

にわとり二羽居らず怒りの沸点

のこされ島は暮れ最後の墓碑銘

老いゆく群星にチップス先生

太陽黒点かなしみつつ生きる

アンチクライマックス浮浪者むれて

構造主義者のチェンソー錆びつつも

鶴書店さかえあがり無きすごろく

助六寿司をおもう空挺部隊

母集団ゆらぐ変態自衛隊

ばいきんまんにも太陽のある町

ホテル・カリフォルニアに無血革命

赤富士や死後焼かれざるスヌーピー

友とよべるもの無かり茄子をうたえ

Ⅱ.忌みことばはレッツゴー


奴らは腐ってゆくフローベール忌

《こころ》第一章にブラヴァツキー忌

万緑へ七五〇ccナナハン衝きぬゴーギャン忌

順列組み合わせハインラインの忌

くずきりを捨てる艦レツゴーじゅん忌

スプロールに神は居ないねこぢる忌

魔王視点から上島竜兵忌

篝火の燃えうつりボブ・マーリー忌

タージ・マハルなめらか曙の誕

ドルを買いにゆくさくらももこの誕

思考機械バラす池田貴族誕

亡き王女のため田上明の誕

蟹工船爆発ピンチョンの誕

血反吐すればナショナルジオグラフィック

海へ 東京の基督を信ぜず

禰宜の独身寮にはためけるシャツ

現代能楽集ラコステをぬげ

ネットオークションにやぶれて母の日

社会になんど訊いても蟹の名前

傘いっせいにひらき父をうしなう

ものがたりコロッケ揚がる崖の下

韻文にみちるコンテナをはこんだ

黙殺ののちに芽をだすレンズ豆

遊戯室から去る鷺の白きかな

街の灯に油淋鶏を特撮す

五月闇ビッグ・ブラザーまなこ閉ず

酩酊船にはリズムだけがあった

塩しろきカニバリズムの映画館

肉の愛あるままリアリズムの宿

羊歯でありつつリズム・アンド・ブルース

梅雨夕焼け天然色 トカトントン

時間芸術スヌーピー檻の中

チクタクマンが焚す村上春樹

鯖 だがそれはリズムではなかったか

《流れる》をみて南の島に客死

テクマクマヤコンの流派が違った

炎流れる彼方にムーミン谷

人間大の桃に人間の罪

五月雨れて天皇時間漂流記

肉体言語綺語をなす芋畑

つづく連想有明に畑正憲

うつし世は夢ならずアダムの畑

神はぎらぎらマクドナルド農場

キャッチャーの分身つづくイン・ザ・ライ

今泉慎太郎死すパチかるた

アンチ・オイディプス水道管時代

山手線品川駅象を消す

手品師の手すでに丸太戦後終ふ

恥の文化スカンクを解剖して

ギャル男がしたためるヘロデ王偽伝

Ⅲ.ガンダム確認


鳥人の村暮れて戦時生活

善の研究もろびとがガスを抜く

事件ついに起こらずして迦楼羅村

白鳥の歌は鈍器でなかったか

形状記憶合金キダ・タロー忌

人類苦てふもの河合雅雄の忌

数字的風景とせむシナトラ忌

鏡の國に罅はしり江青忌

脱獄已然にリタ・ヘイワースの忌

魚群は網につながりてバイエル忌

思考漏洩すザッカーバーグ誕

鬼は森へゆくソフィア・コッポラ誕

タンカー沈没古尾谷雅人誕

空想のインドに佐戸井けん太誕

月餅を割るまでがルーカスの誕

海棲生物地に充ち茂吉誕

蟬の聲いつまでも時間森林

くるしまざる時無し乳牛を飼う

人間時計の意味われは老いぬる

われ醜くなりて鎖をもとむる

金魚ずっと溺れ人間蒸発

動物園に放火して痴者のおれ

或る悪意笹を喰いつづけるパンダ

ユーカリ毒素ありふるさとにけもの

風に葉ゆれてわれにひとつきりの死

罪人としても風のなかをあるく

痴人はわたしのひとり船をおりる

河馬の醜さうつくしさ心擦れ

悪人ばかりの広い天文台

糞つまらない詩を書く天皇心理

シド&ナンシー万緑が炎える

盲者のまわりがすべてたるんでゆく

人は死ぬベースキャンプみずから焼き

鳥の童話の嗚呼とさけぶほころび

うつくしくふとる痣あり救いぬし

憂我論ガンダムなどをみてかえれ

世界劇場かんてんぱぱ錬りつつ

北斗の拳で云うとノンブルのずれ

発熱したし妻へも花を買えず

悔悟録マットレスどこまで薄し

レム睡眠のおわりに家が燃える

ひとがこわくてケーブルカーを落ちる

妻の分身をみる炎昼くろし

脱魂してばかりのわが半生記

おしまいの日に買う埴谷雄高伝

悪靈が居なかったのでガムを割る

いちどきり黒鳥をおもいだす夏

だれかに救ってほしくて焼野原

いま家が燃えている誤謬戦隊

モビルスーツを誤認して風置場

Ⅳ.聖域をみつけて


ガンジーの記憶とびとび夏の月

サーチエンジンクラッシュし記紀歌謡

録っておいた志村けんの海豚漁

宇宙の缶詰じぶんを憎みつつ

記号の國に聖母マドンナたちの和讃

鶏は焼かれつ兄弟姉妹に似る

家裁年鑑をやぶくアトム大使

伊那テレヴィジオン誤産してゆく螺子

盗作すると馬が一瞬炎える

裸の妻をみにゆく獄門島

靴をうしなうマイクロノヴェル未完

焚書のつづきに芋をあらうましら

橋落ちて世は醜いものにみちる

ダダイストの手記から木星におう

韮を焼きつつデヴィッド・ボウイの帰路

旗屋にすわりこんで架空のわが子

シミュレーションゲーム氷風呂をでる

聖域をみつけて蟹股のぼくら

愛撫マリリンモンロー・ノーリターン

攻撃本能廃嫡おばあさん

異星の客が客喰う土葬の村

くるしいことおおし伏線回収

石貨かがやくカリオストロは深夜

同窓生の大根を斬る魘夢

生は苦にてしろくかがやくメルカリ

釘をひろうあげくモータースポーツ

汝姦淫すべき死の海と意味

こえなき光波かさねモービィ・ディック

官能や八幡屋礒五郎は死す

雲は沈黙して社内ドーピング

三次元空間のオーヴァードーズ

鳥を呼ぶたびサイボーグフェミニズム

貼りつく意味をそぎおとす砂中都市

砂中虫をとらえてもう帰ろうか

バスケットシューズおうちは消えてゆく

正義論のそれぞれ愛猫をふむ

韻などはない新新興宗教

殉教大学そびえ街にあかり

五月の気象には麻痺する顔面

Tシャツを買った純粋正義論

バスケットケースも閉じる夜の底

目つむれば見わたせるいるか牧場

豚飼いを抱くインターネットマザー

猫の人生には二進法の有無

させられ感にみちて馬のくる家

サマータイムがはじまる犬小舎うえ

チア・ボーイにおう老人たちは死ぬ

緑色の研究楽園地獄

頭突きしています恋とは何でしょう

饑餓海峡をかんがえる人の波

Ⅴ.二つの世界


油田からみてもアナザーストーリー

物語論火焔太鼓を炎やす

必勝の構え鋼鉄人に過去

過去・未来・擬過去・擬未来小骨折る

ひとをうらぎってここから地動説

ストーリーテラーにずっと熔ける銭

これより地獄手話で云うのどぼとけ

デバッグしつつ炎と経済学

催眠術にかかる小人レスラー

ながいローマ字日記 欲望の國

植物群砂の上ボディブロー

プロレスラーがあたためるおしらさま

テレパシストは犀を解剖したが

縄文期は終わっている横車

聖五月エクスタシーのつちぼこり

あやまる ひとはみんなおれをみ棄てた

エチュードとぎれとぎれ物体に翳

獅子王は感傷的に刺され死す

地獄の星に厨・厠あり 噛め

亀をみていた銀河ゆっくりと消え

最終章はねむいみみずく噺

でぶ専としてあなたはおぼろ昆布

涅槃へ ヴィデオクリップはなかった

海へゆく少年たちはひどく喜怒

ヨーゼフを将棋小説からひけば

入港の日日精神に異常あり

嘲笑されたことも 向日葵も枯れ

葬列がながくて代理打者と化す

ドキュメント二十五時間左打者

ほぼ日時計のかたちして昇華せず

さびしいのはおまえだけレモンを切れ

倉庫番がでてゆくさきに終わる世

リインカーネーションから失墜の句

われ失敗品として暗夜行路

たれを信ずる暗闇にボクシング

にせものの句と思い恋をしにゆく

うさぎ軍拡する因果地平線

冴えたやりかた熱帯植物枯れ

孤独の発明ドアマンへのドア

わずかに偶数血しぶき計算機

狂ったひとへ鯖缶をみせにゆく

ピロシキはただそこにあって勿体

フランシスコの踊る猫又の会

坂をここまでくだった明日もピエロ

フランス映画にはふたたびのきつね

うどん・そばの店から自己に迷って

テクノロジーの飯店に詩があった

薔薇のいろとして思いつくアイロン

手術台にあがる銀河放浪記

二つの世界にはショッキングピンク



 



Ⅵ.われは狂ならんとして (有料記事50句)

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