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アンテナを立てて(銀河忍法帖)  川柳140句



Ⅰ.ベニヤにニス


仮想通貨をもて買い漁る如雨露

坑夫堕落して梅雨のベニスに死す

三人称の雨について語れば

蟹座へと生まれかわって雨つづく

六月のくせにのび太のくせに雨

驟雨 ユーチューバー腹式呼吸す

雨に消えるこびとの東京都……悔い

太古バービーという種族があった

象を狩る罪の概念つくられて

たかが檻新しいヒトよ眼ざめよ

あらゆるものを喪ってサピエンス

ニーチェ全集万引きされ短夜

戦前のはじまりダーウィンの羽化

地に充牣よ神は有明海を視ず

六月がいしだあゆみに立つてゐた

歳月や霊柩車なおうつくしく

聖書ふたたび濡れてペーパームーン

去るのは誰ださよならムーンサルト

餓鬼さらに餓えセーラームーンの夜

スケキヨは単に月光菩薩だが

アニミズムの宿から出て昼の月

時間かたちなすアメリカン円墳

アパシィ都市にわれらハラキリもせず

私小説「バルタン星人の握手」

ゴリアテ芸人の動物園ネタ

爪わずかのび深夜の結納式

スターバックスに僧 いくさにチーズ

動物園忍法帖しろい壁

ソナタ〈砂の器〉ジョルジュ・サンドの忌

三等重役のハーケンクロイツ

瓶ビール手刀に斬られ死は三島

無を書けばリンデンバウム彫るわが子

エッシャーへ魚鱗のひどい旅終わる

牙をなくした舞踏会にねむらず

野性時代のほんのりとした補色

アフター・マンのあのこは時間寺院

時間寺に三びきの仔豚のマーク

聖母子図南野陽子砂金採る

腐らざる時の納豆ながい昼

白日夢みたいに饐えた大空位


Ⅱ.クイズ映画の弾幕


篝火を消してしまっていた散歩

スペードの女王宅を気でとばす

仄ぐらい位置に火のある火縄銃

女坂男坂へとジェノサイド

トラウマになっている飛驒盆地痕

温泉へ死をかんがえる蛾はしずむ

マッスルのつぎにだいじな章魚を切る

章魚を切るときはコンテンツ革命

ナロードニキいっさい夢千代日記

クイズ映画の遠くから尾行され

自意識をかくの如くに豆腐マン

スパイダーマンと涅槃を切って貼る

トドの世界がかいてある掲示板

模型の森 夜よりほかに聴くもの

カーヴィーモデルが死を想う槍投げ

白鯨の位置に炊飯ジャー泥む

オールバック大佐を燃えさかる酒保

鉄閣寺 いかを盗んでいるあいだ

卵をかかえていたのか往還記

反物質に手でふれる三銃士

ダイヤモンド社に明日の涯ての雨季

はらわたや和尚かならず死に給う

國民に國旗燃えつつサピエンス

じゃがいもは芽ぶくカプセル宇宙論

いま狂って豆腐吐くプロレスラー

誘蛾灯にて読み耽る嘲笑記

妻の愛した笛に妻の夏風邪

相撲協会が作詞す反戰歌

仏具屋のユートピアあり彗星雨

マネーゲームがはじまった男女ノ川

しゃぼてんの花ざかるまでジョブチェンジ

未知の言語に言語論的な犬

零か百くさいみどりの守り神

駄句としてアダルトヴィデオ緘黙す

靈歌やみメゾソプラノである羆

八ツ裂きもここも元禄快挙録

怪奇大作戦にみるジュラ紀爾後

狂人のどこまで細い筒ならむ

パイプカットのあとさきのすぐに梅雨

滅亡時代までパねえヨーグルト

きのこ紅茶も拘置所も散文詩

散文詩トラウマ街道をゆけば

割れものとしてもヒトラー・ユーゲント

合体がほどけとなりのサイコくん

仏滅やダービースタリオンましろ

壊れものとして黄門漫遊記

ヘルメット大江健三郎は死す

現実と大江春泥から洗茶

犯罪計画へトビー・マグワイア

餃子屋の比喩がいよいよ尽きて神

藝神のバリアは硬い泥の町

白濁する意識上の瓜畑

揮発してからも高木が居る奇蹟

おまえはおまえひとり猿股を書け

無罪から赤い仏滅までつづく

美学 赤い仏滅緑の無罪

六道もあたまもへんになっていた

螢光やマリオ・バルガス=リョサの家

水道管に軍神の断ちきられ

戦争は黄色どこまでシニフィアン

Ⅲ.夏至は決死のあんまん


ノンアルの換喩としてゆうひが丘

ラカニアンをあつめ迅し意識川

非象徴天皇群をパノラマ視

バイトくんが吃っている人造湖

五秒後に死ぬかもしれずまたも雷

死にものぐるいばかり梅雨のサーカス

ペプシコーラをうしなってから家裁

夏至のあんまんもポケットモンスター

隠花植物枯れ擬似天皇制

世界の中心に漬けざる浅漬け

邪道外道を容れるクラインの壷

ドーパミン分泌されやがて戦後

ねじの廻転つづく日が三沢の忌

漁船天動説に拠る三沢の忌

もりそばの谺す三沢光晴忌

ポルノグラフィティ冷ゆる三沢の忌

ハンバーガー未遂事件三沢の忌

ローテクスニーカー剝けて三沢の忌

山のあなたの自動スラッシュ文化

柔らかい月から月へ百合を書く

コスプレイヤーの焼豚はむらさき

ひげ根抜くまでスプロール作詞法

ハモニカ市にあらわなるさとう珠緒

或る反実仮想に夏のおとうと

焼き討ちされビデオドロームのおわり

記憶の螢アンポンタン・ポカン氏

悪として演ずるユング料理店

力道山もソヴィエトも籠おおし

犬の眼に星座は死後のかたちする

蛇が林檎にふれるまで解氷期

とても献体六月十三日

かのやうに川柳会に裂くバナナ

岡本かの子のくりかえすのこぎり

残夢感……スペシウム光線をうつ

汚穢屋の大想像のかたせ梨乃

いちげんさんが消えるまで世界箱

ケンタウロスの子守唄腐喰都市

寝ずの番つづくイエローサブマリン

炎と氷菓 世界そのもの与ふ

ノイズやんでから処女林にわけ入る


#川柳 #定型詩
#詩歌 #文芸 #創作 #エンターテインメント #三沢光晴 #ノイズ #ケンタウロスの子守唄 #イエローサブマリン #夏至 #雨

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