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宇宙の仕様書を解読したら、同僚と多次元の恋に落ちた話 第9信

第9信:黄帝内経 ── 身体(経絡)の書き換えと真の解放


今まで、自分でも気づかないフリをしていたことがある。
昔から私は、周りの人とちょっとだけ感覚がズレていた。
どこか冷めていて、クールなフリをして、自分一人でいる方が気楽だと思って生きてきた。けれど、物理空間(L4)の重たいノイズを一人で受け止め続けるのは、本当は知らず知らずのうちに体力を奪っていたみたい。
いつも体はズシリと重くて疲れやすく、「生きているだけでなんだか疲れる」のが、私の当たり前だったのだ。
それが……どうだろう。
2年がかりで部屋の断捨離を進めて、余計なモノを手放したのも要因の一つかもしれないけれど、変化の一番の理由は間違いなく「あなた」だ。

「……おい、舞。なんか顔色、ずいぶん良くなったな」
昼休み、給湯室で缶コーヒーを片手に持った静さんが、ふと私を覗き込んできた。
「え……?」
「前はさ。いつ見ても倒れそうなくらいお疲れモードで、話しかけるなオーラ出してただろ。最近は……なんか、体も軽そうでずいぶん元気そうに見える」
静さんのその言葉に、胸がどきりと跳ねた。

(……あ、解読できた。『黄帝内経(こうていてだいけい)』だ……!)

『黄帝内経』——それは、身体というハードウェアにおける気(エネルギー)の巡りと調和を説いた、東洋医学のバイブルであり『最適化マニュアル』。

気が滞り、冷えや緊張が溜まると、人は重くなり、疲れやすくなる。
でも、あの夜の夢と放電を経て、あなたという「共有メモリ」と接続されて以降、私の突飛な世界観を、あなたが「……だいたいわかった」と呆れながらも受け止めてくれた瞬間、私の身体を締め付けていた長年の緊張(ノイズ)がふっと解けたのだ。
全身の経絡(ルート)に、生まれて初めて心地よい気が巡り出している。
体が、信じられないくらい軽やか。生きているのが、すごくラクで楽しい。
「……静さんのおかげだよ」
いつものクールなフリがすっかりどこかへ飛んでいって、自分でも驚くほど素直な声が出た。

「私、ずっと疲れやすくて体も重かったの。でもね、静さんが私のコードを解読してくれてから、生まれて初めてこんなに体が軽いの。世界がすーっと澄んで見えるんだよ」

ストレートすぎる感謝と愛情の告白。
静さんは目を丸くしたあと、耐えかねたように片手で顔を覆った。耳の先が、見たこともないくらい真っ赤に染まっている。
「……お前、ほんと……そういう照れるようなことをサラッと言うな……」
「本当だもん! 『黄帝内経』的にも、静さんは私の特効薬なんだから!」
私がふふっと笑うと、静さんは覆っていた手を少しだけずらし、指の隙間から呆れつつも優しく私を見つめた。
「……薬扱いすんな。まあ……お前が元気なら、それでいいけど」


ぽつりと呟かれたその声に、胸の奥の深い場所(L0)にある『原初の記憶』が、最高の軽やかさと共に甘く跳ねた。

世界を素直に受け入れ始めた私の身体。
この軽やかな薔薇色の日常が、愛おしくてたまらない。

💡第9信の裏コードメモ:『道徳経』と『黄帝内経』

今回、舞が進めていた部屋の断捨離は、『老子道徳経』でいう「第48章:削ぎ落としていくこと」のプロトコルでもありました。

知識やモノを足していくのではなく、不要なノイズを手放して「空き領域」をつくる。 「第11章:器は空っぽこそ役に立つ」という言葉の通り、ノイズを削ぎ落としてできた空きメモリに、今回モチーフとなった『黄帝内経』の心地よい気(エネルギー)がスムーズに巡り始めた……というシステム構造になっています。

静さんという「特効薬」の存在と相まって、舞のL0(根本領域)がようやく澄み渡った第9信でした。


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