七夕の歩幅【毎週ショートショートnote】
「夕焼け、すごく綺麗だね」
二〇二二年七月七日。
高二の石原規広(いしはら・のりひろ)は、付き合って間もない同じクラスのリカコと歩いていた。
「うん、こんなに鮮やかだなんて、なんだか作り物みたいだよね」
ぎこちない。いつもは冷静で鋭い切り口の規広だが、女の子の前では辿々しく話すことしかできないのだ。
「ねぇ、ノリくん」
「ひぃ、あ、はい、ノリくんです」
規広はリカコに「ノリくん」と呼ばせているのに、呼ばれるたびに身体中がこそばゆく、しかし心地よくなる。
「じゃあね、また明日」
二人が別れた瞬間、後ろから規広の幼馴染の大森光二(おおもり・こうじ)が現れた。
身長一八五センチの巨体を、一体どこに隠していたのだろうか。
「ノリ、お前歩き方までめちゃくちゃ変だったぞ」
「女子の歩くスピードに合わせるの、結構大変なんだよ。『そんなに歩幅小さいの?!』って言いたくなる」
「女子に歩幅まで合わせるのが『いい男』ってもんだろ」
光二が戯けて言うと、規広がまた口を開く。
「お前と歩くのは楽だ」
「そりゃそうよ。俺たちゃ、歩けるようになる前から並んでハイハイしてたんだから。同じスピードで」
