✴️我が子はなぜ親の尻をキャンバスにしたのか
迂闊だった。
片付けなければならないことが山ほどあり、疲労と寝不足が限界に達していた。
そこにアルコールが染み渡り、いつも以上に酔いが回った。
「5分だけ横になる」
そう言ってソファに倒れ込んだのが運の尽きだった。
次に目を覚ましたときには、きっちり1時間が経過していた。
リビングに妙な気配がある。
見ると、息子がニヤニヤしている。
「そんなに、父の寝落ちが面白いのか」
そう思いながら視線を移すと、なぜかテーブルの上に、無造作に置かれた油性マジック…
嫌な予感しかしない。
鏡の前に立つ。
顔、額、ほっぺ、無事。
腕も、腹も、問題なし。
「あれ?セーフ?」
そう思った瞬間、息子が誇らしげにおもちゃのカメラを差し出してきた。
そこに写っていたのは
ズボンを半分下げられ、無防備な尻をさらし、
その真ん中に「おしりたんてい」の顔を描かれた自分だった。

完全なる不意打ちである。
爆睡していたため、ズボンを下げられたことにも、油性マジックでしっかり描き込まれていたことにも、一切、気づかなかった。
いや、そもそもだ。
親の尻に落書きする子どもが、どこにおるねん。
しかもチョイスが「おしりたんてい」なのがまたひどい。
お尻に「おしりたんてい」。
これ以上なく小学生らしい組み合わせなのだが…。
あとで必死に妻のクレンジングオイルで擦り洗いしたが、完全には落ちず。
しばらく私は「うっすら探偵のいる尻」を抱えて生活することになった。
それでも息子は、満足げにこう言った。
「パパ、似合ってるよ」
いや、似合ってるとか、そういう話じゃない。
だが、不思議と怒る気にはならなかった。
むしろ、両親が教員という、良くも悪くも型にきっちりはまった環境で育ってきた自分からすると、ここまで予測不能な行動をとる息子に、感心すら覚えてしまった。
とはいえ、油性ペンだけは勘弁してほしい。
そこはせめて、水性にしてくれ、と心の中で願った。
人生で最も警戒すべき存在は、「油性マジックを手にした我が子」なのだと、身をもって─
いや、尻をもって学んだ夜だった。
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでくださってありがとうございます🦐
あなたの応援が、次の創作の原動力になります。
いただいたサポートでより良い記事の作成など、今後の創作活動に大切に使わせていただきます🦀