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タイガーとジャガー

 駅から大学へ向かう緩やかな登り坂で、ギターを背負ったタイガーと出くわした。
「百さん、今年の新入生は中々の濃さですよ」
「そうかね」
 タイガーは顔を輝かせながら、その一人一人について語り出した。
 そうして教えてくれるはありがたいが、自分はもう四年生になってサークルを引退しており、新入生のことにはあんまり興味がない。いい加減に聞き流していると、タイガーはジャガーの話を始めた。
「そうそう、それでね、ジャガーってやつがいるんです」
 タイガーがジャガーの話とは穏やかでない。
「ジャガー? 何だね、そいつは?」
 こちらが食いついたものだからタイガーはいよいよ顔を輝かせる。
「ジャガーっていうのはね、もちろんあだ名ですよ」
「そんなことはわかってる。どうせ君が付けたんだろう?」
 全体、彼はくだらないあだ名を付ける名人である。特定を避けたいのとあんまり品がないのとでここには書かないけれど、常々後輩にひどいあだ名を付けてはニヤニヤしている。
「ジャガーはね、顔が腐ったジャガイモに似てるんです。それでジャガーなんです」
「……は?」
「腐ったジャガイモに……」
「待ちたまえよ。ジャガイモに似てるはおおよそイメージできるがね、何も腐らせなくたっていいだろう?」
「はぁ。それでも似てるんですよ」
「腐ったジャガイモにか?」
「はい」
「腐ってないジャガイモには似てないのか?」
「似てなくはないですが、腐った方がしっくり来るんです」
「俺は君の後輩じゃなくて本当に良かったよ」
「いや、付けたのは僕じゃないです」
「じゃぁ誰だね?」
「自然に……」
「自然に、あいつは腐ったジャガイモに似てるからジャガーにしようってなったのか?」
「ぷっ」
「そんな自然はない」
「うふふふ」
 タイガーは随分嬉しそうに笑ったけれど、後から考えるとこのやりとりをしたのはタイガーでなく春日だったようにも思われる。


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