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尾籠な話

 仕事で外出する際、昼食をラーメンばかりで済ませていたせいか、とうとうラーメンを食べたら腹を下すようになった。
 下すと云っても痛みはない。やたらにお通じが良くなるばかりである。自分は普段が便秘体質なものだから、デトックスできた感があって、その点は甚だありがたいけれど、急に来るのが乱暴だ。何しろ日に何度も波が来る。それが本当に暴力的な勢いで来るのだからガラが悪い。
 しばらく間を空ければ大丈夫だろうと当分ラーメンを控えていたが、昨夏北陸へ出張した際に久々食ったらやっぱり下した。一泊二日で両日ともラーメンにして、帰りの高速道路でも何度か波が来て、あの時は大いに難儀した。
 先日、やっぱり仕事の用事で出張した。
 そうして昼にラーメンを食べたら、晩になって果たして腹がぐるぐる活動を始めた。結局一晩で四回トイレに入り、それでようやく落ち着いた。溜まっていた分を恐らく全部処分できたのだろう。
 翌日はもうラーメンを止して、代わりにうどんを食べた。
 帰りは高速道路が途中で通行止めになり、下道へ下りるまでも下りてからも大いに渋滞した。あれでぐるぐる来たらどうなっていたかと考えて、随分ゾワゾワした。

 職場の大先輩だった小曽根さんは、ラーメンとは関係なく常にお腹が緩かった。何十年もその調子で、急に波が来るから油断ができない、常在戦場なのだと、何かにつけて語っていた。
 それがある時、高速道路の渋滞中に波が来た。最初はどうにか我慢したけれど、車列は一向進まない。のみならずとうとう動かなくなるに至り、小曽根さんはこのままでは身の破滅と、ついに覚悟を決めて車を降りた。そうしておもむろに中央分離帯でしゃがみ込み、無事に用を済ませたのだと云う。
「あの時は……、大変だった……」
「小曽根さん、高速道路ですよね?」
「そうだ」
「渋滞でみんな動けないんですよね?」
「そうだ」
「それ、みんなに見られてたんじゃないですか?」
「それは大丈夫」
「大丈夫、ですか?」
「うん、大丈夫」
 全体どういう道理で大丈夫と云うものか、追及するのも気の毒だから訊かずにおいた。それからどうかした弾みにこの話を思い出すと、どういう仕組みで大丈夫だったか考えるのだけれど、ついにわからないままである。


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