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結婚の条件、大女優

 自分が三個めの唐揚を取ると、小佐田君が木村君に「それで、これからどうするつもりなん?」と言った。
「どうするって、今まで通りよ」
「じゃぁ、やっぱり二十代じゃないと駄目なんか?」
「そりゃぁ、譲れん」
 自分は一人で唐揚をパクパク食べている。
「もうちょっと、自分の条件とか考えた方がええんじゃない?」
「はあ?」
「あんたも、もう四十代の半ばなんよ?」
「それが何ね?」
「特に金持っとるわけでもないじゃろ? まぁ独身な分、自由に使える金はわしらよりあるじゃろうけど、それだけじゃろ?」
「そりゃぁ、のぉ……」
「それで相手が二十代じゃないといけんって云うんは、わしは無茶じゃと思うがねぇ……。百君どう思う?」
「ん? そりゃ、木村君、無茶じゃろ」
 自分はもう一個唐揚を取った。唐揚はそれでなくなった。全部自分が食べた格好である。もう一皿注文しようかと思ったが、何もそんなに唐揚ばかり仇のように食わなくたっていいので止した。
「そこを譲るぐらいなら、わしは一生一人でええよ」
 木村君はあくまで強気である。彼は中学時代にスポーツ万能で、女子にモテたのではないかと思う。思うというのは、その時分彼とは一向接点がなかったからよく知らないのだけれど、中途半端にモテたおかげでこういう偏屈なおっさんができあがるのでは、モテるというのも考えものだ。もっとも、昔から一貫してモテもせず、その結果として偏屈なおやじになるよりは、良かった時期がある分マシかも知れない。自分なども現在妻子があるからあんまり目立たないが、一歩間違えばモテなかった偏屈おやじになっていたかも知れない。実に危ないところであった。

 唐揚がなくなったので、自分はビールのジョッキを呷った。ところへタイミングよく店員がやって来る。
「ビールもう一つ」
「はい」
 小佐田君と木村君の辛気くさい話に辟易していると、隣のテーブルの女子四人組の会話が耳に入ってきた。
「あの子のは凄いんよ! 大きいし、触らせてもらったもん」
「どんな感じじゃった?」
「マシュマロ!」
「え〜! ほんまに?」
「あははははは」
 マシュマロと云った女子が、どうも綾瀬はるかさんのように見えた。元々広島の人らしいから、きっと違うと断言はできないが、それにしたってこんな田舎町にいるのは不自然だ。だから恐らく違う。しかしどうも似ているようで、段々気になった。
 あんまりじろじろ凝視るわけにもいかず、チラチラ見たが、チラ見ではどうも判然しない。だからチラチラ見てはビールを飲み、ビールを飲んではチラチラ見る。
 するとそのうち、疑・綾瀬がテーブルからスマホを落とした。落ちたスマホは小佐田君の足元へ転がった。
「あ、ちょっと待ってね」
 小佐田君が拾って返したら、疑・綾瀬は「ありがとうございます」と恐縮しながら受け取った。
 自分たちはそれからじきに帰ってしまい、結局どうだったのかは、もうわからない。
 何だか残念な気もしたが、本物だったらどうしたろうと考えると、別段どうでもいいと落ち着いた。


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