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落下

 ある時、母と祖母と出かけた。自分は小学校の三年か四年ぐらいだったろうと思う。どこへ行ったかは覚えていないけれど、道中で昼食をしに喫茶店へ入ったことを覚えている。
 その店で、自分はピザを注文した。当時は、外食時はいつもピザを頼むことに決めていた。

 まだイタリアの薄焼きスタイルが入って来る以前で、この時分のピザは生地が厚くてかりっとしていた。具はサラミのスライス、たまねぎ、ピーマン、オリーブで、大体どこの店でも同じだったように思う。果たしてこの店のも、同様の厚焼きサラミピザだった。
 ただ、フォークが一緒に来たのがいつもと違っている。よそではおしぼりが一緒に提供されるきりで、こんな物は付いてこない。
「フォークが出て来た」と驚いたら、母が「そうね」と言った。それがどうしたの、と云うような口振りである。
 それで、どうやら自分が知らなかっただけで、ピザとは本来フォークで食べる物らしいと得心した。
 ところがフォークで刺してみると、何だか食べづらい。生地が堅いものだからあんまりしっかり刺さらず、どうも不安定なのである。
 それでもどうにか一切れ食べて要領を掴んだ心持ちになったら、二切れ目はフォークから外れて足元へ落ちた。

 全体、フォークでピザを食べさせるなんて話が違う。おかげでまんまと一切れ無駄にした。心中大いに憤り、是非にも母から店へ文句を云ってもらおうと思った。
「落ちた!」
「あらあら」と祖母が言った。
 そうして母は、「落ちてないのを食べなさい」と随分当たり前のことを言った。
 そういうことではないと思いながら、落ちてないのを手で食べた。

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