五芒星☆
星印について考えていると加藤保憲が頭に浮かぶ。
加藤保憲は『帝都物語』に登場する悪者である。軍服姿で、五芒星を染め抜いた白手袋を着用している。随分長い顔をして、何かにつけて帝都を壊滅させようとする。
高校二年生の時、『帝都物語』の映画が公開された。何だかスケールの大きな作品だったようで、随分話題になっていた。
自分は映画は観ていないが、当時新聞で宣材写真を見て、何だか懐かしいような心持ちがして気になった。どういうわけか、戦前の風景を見ると祖父を思い出すのである。
それで学校の図書室で原作本を開いてみたが、全十巻もあって気が遠くなり、一巻の冒頭だけで止してしまった。
大学生になってから、たまたま入った古本屋で全巻束売りされているのを見つけた。それを買ってようやく読んだ。
果たして最初はわくわくしたが、進むにつれて話が段々ペラくなり、最後はとうとう角川書店の当時の社長のヨイショになって雲散霧消した。
自分は最終巻を静かに閉じて、全体これまで何を読んできたかと、大いに考えさせられた。
星印は元来魔除けの紋様だと、この作品で知った。もっとも、それがどうして空の星になるかは判然しない。
星印と云うぐらいだから、自分もあれは星と認識しているが、実際に空を見たってあんな形の星はない。
まだ幼稚園にも通わない頃、母と祖母とクリスマスツリーを飾った。
ツリーの箱を開けると、何だか銀色のトゲトゲしたのが一緒に入っている。
「これ何?」と問うたら、それはお星様よと母が云う。その隣で祖母が、そうねぇと云う。
「お星様?」
「ツリーの天辺に着けるのよ」
「ぼくが着ける」
「うん。最後に着けなさい」
ツリー本体を立てて、針金の入った木の枝を広げ、母と祖母が雪に見立てた綿を着けるのを、自分は星を掴んで見守った。
そうして最後に星を天辺へ差した。
あのトゲトゲした形を星と認識したのは、この時からだったように思う。
こちらの企画から「星」のお題をいただきました。

【電子書籍、販売中です】
代表作『牛おばさん』とその後日譚(書き下ろし)、違和感と余韻を残す随筆集『いつか見た情景一・二』、不思議な話・気持ちの悪い話を集めた『ここではないどこか』の4部構成。
いいなと思ったら応援しよう!
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。