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nekonogara
静電気とおじさん
ぼちぼち散髪のタイミングなので床屋へ行った。
もう洒落た髪型にする年でもないから、自分はいつも千円床屋へ行く。ショッピングセンターの中にある店で、その日はちょっと混んでいるようだった。コロナ騒動以来、床屋の入口前のベンチで待つことになっているが、ベンチいっぱいに人が座っている。
待ち時間にスマホでnoteの文章を書くから、待つがのは一向構わない。この分だと待っている間に一本仕上がりそうだと思った。そうして記名して券売機へ金を入れたら、どういうわけかチケットが出ないのである。
機械を覗き込んで探していると、先に待っていたおじさんが「券が出ないよなぁ、それ」と言って一緒に覗き込んだ。しかし二人で覗けば見つかるものでもない。
おじさんは問題解決の妙案を出すでもなく、困った顔をして「出てこないんだよなぁ、困るんだよなぁ」と言うばかりである。一体何をしに寄ってきたのか甚だ判然しない。付き合っていても埒が明かないので、「すみません」と店内に声をかけた。
じきに奥からおかみさんが出て来て、状況を説明したら「ちょっと待ってね」と、券売機の蓋を開けた。
チケットは機械内部に静電気で貼り付いていたのである。
「はいどうぞ」と渡されたのを受け取って、これで一件落着と思ったら、先刻のおじさんはまだ片付かない顔をして、「俺も券が出て来なかったんだよ」と言って自身の券を見せた。
手に持っているのだから出て来たのには違いない。そんなまとまりのないことを云われては、おかみさんだって困るだろう。
果たしておかみさんは、そうですかと云って困った顔をした。自分はそれを眺めてニヤニヤした。
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