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nikumori
ファミマの音、ドアの向こう
ファミリーマートに入るとどこの店も同じメロディが流れるけれど、あれはファミマのオリジナルではない。自分が学生時代に住んでいたワンルームの呼び鈴もあれと同じだった。
あの時分、あらかじめわかっている場合以外で呼び鈴が鳴ると、いつもうんざりした。約束無しで鳴らすのが大抵面倒な相手だからである。
電話回線の営業が来た時だけはちょうど必要だったからよかったけれど、その次に布団の営業が来た時は三十分ぐらい雑談に付き合った。
ドアを開けて顔を見せたら、バンドやってるんですか、僕も昔ヘビメタだったんです、と懐かしそうな顔をした。そうして、布団の話じゃなくて、ちょっと音楽の話いいですかと云う。今ならぴしゃりと断るけれど、まだ世間知らずの若造だからそういう加減もわからず、部屋に上げてやった。バンドで東京へ繰り出してまるで刃が立たずに帰って来た話と、布団屋の営業が大変だという話を一頻り聞かされた。
布団屋氏はランディ・ローズが好きだと云っていたが、自分はザック・ワイルドの方が好きなので、あんまり共感できなかった。ただヘビメタの末路として、自分もいずれこうなるのかと思ったきりである。
ある時また呼び鈴が鳴ったのを、面倒くさいから放っておいた。明らかな居留守はさすがに感じが悪いので、テレビの音を下げて息を潜めていた。
この頃住んでいた所は居室と外の隔てがドア一枚きりだったから、こういう時には随分ドキドキした。
呼び鈴は都合三回鳴ったけれど、ずっといない態で通した。後で外出する際、ドアに「イルスアホカ」と書いた紙が挟まれていた。
それで居留守がバレていたことはわかったけれど、誰が何の用事で来たのかはついにわからないままだった。
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