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yasuyasue
バッタと英志の受難
中学校で昼休みに英志が大きなバッタを捕まえた。足許を跳んでいたのを片手でさっと掴んだのである。
「捕まえたでぇ、へへへ」
したり顔でゆっくり手を開くと、バッタは足が一本取れていた。足は英志の手の上に転がっている。どうも掴み方が雑だったらしい。
「おわ! 気持ち悪いのぉ!」
英志はバッタを放り出して手をブルブル振た。バッタは掴むのに足だけだと気持ち悪いというのは、一体どういう料簡だろうかと思った。バッタはこれ幸いとばかり、大きく跳躍して逃げた。
「英志、普通に跳んだで? あいつ、どうやって跳んだんな?」
「知らんわ、くっそ」
英志は顔を赤くしながら、手を打ち鳴らすようにして何かを祓った。それで気持ち悪さにケリが付いたのか、彼は「もっぺん捕まえてみよう」と片足バッタの方へ踏み出して、傍らへ置かれた整地ローラーにつまずき、ばたりと転倒した。
あんまりきれいな転び方だったから、自分は腹を抱えてげらげら笑ったが、ちょうど通りかかった体育の花木先生が「おい、大丈夫か?」と、心配そうな声をした。
「僕は大丈夫です」
英志はやっぱり赤い顔をして起き上がり、先生の方は見ないまま、バッタを追った。
安否を問われているのは英志の他に誰もいないのだから「大丈夫です」でいいのに、わざわざ「僕は大丈夫です」とやるのはよほど動転したのだろう。そう思ったらいよいよ面白くなって、自分はますます笑った。
ひとしきり笑ったら段々飽きて、ひとまず笑いは止したけれど、何かの弾みに思い出してこの話をすると、その度に英志は「うるさい」と言って赤い顔をする。それで自分は、またじわじわ笑った。
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