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坊主地獄

 仕事の都合で、長野へ車で出かけた。
 昼前に到着し、用件は午後からだったので、まずは蕎麦を食べようと考えた。スマホで探すと、果たして近くで一軒ヒットした。何だか普通の家みたいな店らしい。
 せっかく食べるなら、チェーン店よりもこういう単店の方が一期一会の妙味がある。それに信州の単店蕎麦屋なら、どうやったって美味いに決まっている。自分は迷わずスマホのナビを開始した。
 ところが、わくわくしながら行ってみると、思っていたのと様子が違う。
 外から見た時点で、どうも人気ひとけが感じられない。入る人もなく、出て来る人もなく、並ぶ人もない。そうして昼時なのに、駐車場には車が一台もいない。
 自分は、ことによるとこれはとんだハズレだったかも知れないと幾分どんよりしたが、よくよく見たら入口に「本日休業」と貼紙がしてあった。
 本日休業ではしようがない。もうあんまり時間もないので急いで別の店へ行くことにした。
 これもスマホで探して行ってみると、こちらは丸亀製麺の蕎麦版みたいな店だった。後で調べたら純然たるチェーン店で、愛知県にも出店していた。チェーンが悪いわけではないが、自分は蕎麦の味よりお客の坊主頭ばかりが心に残った。

 帰りにサービスエリアへ寄ってトイレへ入ると、屈強な坊主頭の若者たちで甚だ混んでいた。
 小便器が全てこの体格坊主どもで塞がっている。そうして各々の後ろに新たな体格坊主が二三人ずつ列をなしている。
 自分は、何だこの地獄はと思ったが、思ったからといって当人らにわざわざそう云う要はない。だから黙ったままで、体格坊主たちの間を縫うようにして個室へ入った。
 用を済ませて個室を出ると、トイレ内には人っ子いなかった。
 個室に入ってから十分と経っていないのに、あんなにみっしり詰まっていた体格坊主どもが、一人残らずどこへ行ったろうかと考えた。奥の個室から「えへん」と声がした。



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