作文とバントライン
娘が小四の時、新聞の印刷工場で子供向けの作文講座があると云うので連れて行った。
集まったのは小学生とその親ばかりである。
まずはいくつかのグループに分かれて工場内を一通り案内された。工場見学は仕事の都合でよくやったけれど、機械が無駄なく高速で動いて物が出来上がる様を見るのは存外面白い。果たして娘も感心しながら見ているようだった。
それから広い部屋に全員が集められ、いよいよ作文講座が始まった。講師は有名な作文アドバイザーの何樫さんだと紹介されたが、自分には知らない人である。全体、作文アドバイザーという職業があることすら初めて知った。
「作文には型があります」
何樫さんは全員を見回しながら話し出した。
「例えば二百字作文の場合、まずテーマに対する意見、つまり賛成か反対かということを四十字、その理由を四十字、その理由に至った経緯や経験を八十字、最後に結論を四十字ぐらいで書くと、バランスよくまとまります。
「『理由』には、『確かに〜〜、しかし』という譲歩を含めると、より深みが出ます。
「『意見』と『結論』は同じ内容になりますが、単なる繰り返しだと子供っぽくなるので、結論は『これからは〜〜していこうと思います』というように、今後のことにつなげるといいです」
なるほど、作文アドバイザーと云うだけのことはある。そうやって書けば、きっと優等生の作文ができるに違いない。
ただ、そんな金太郎雨みたいな作文ばかりを読まされるのでは、先生はきっとつまらないだろうと、何だか気の毒な気もした。
帰りに車の中で筋肉少女帯の『マタンゴ』を流したら、キノコ人間になったタマミちゃんのくだりで、何これと云って娘が笑い出した。
「タマミちゃんはマタンゴに寄生されてキノコ人間になったんだよ。でも周りの人もみんなキノコ人間になったら、タマミちゃんも目立たなくなるからいいねって云うのさ」
「マタンゴって何?」
「人に寄生するキノコだよ」
それから『サボテンとバントライン』の歌詞を説明してやったのが随分印象に残ったようで、帰宅するなり「お母さん、車の中で変な歌を聴いたよ」と語り出した。
「作文講座はどうだったの?」と妻が変な顔をした。
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