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ウルトラマン、名古屋に現る

 ウルトラマンを初めて観たのは幼稚園の年中組の時だったと記憶している。夕方たまたまテレビを観ていたら始まったのである。
 その名前に覚えはあったが、どういうものかは知らない。オープニングの影絵が何だか気が抜けている。歌もどうも勇ましくない。何だこれはと思いながら見ていると、じきに湖から大きな怪獣が現れた。
 怪獣は口からビームを出して暴れ回る。こんなものが相手では、人間がどう頑張ったって刃が立たない。あわやと思ったまさにその時、銀色の巨人が登場した。
 巨人は怪獣を叩きのめして、最後に両手を胸の前で交差すると、手からビームがぺーと出た。それを浴びた怪獣は、まんまと爆発した。自分は大いに感銘を受け、五十年後の今に至るまでファンである。

 大学の基礎体育学は担当教官によってやる内容が違っており、自分はレスリングの先生に当たった。
 背丈が同じぐらいの者同士で組み伏せ合うので、自分の相手はいつも安藤君だった。お互いレスリングなんてわからないし、興味もない。だから適当に流していた。
 木寺は同じ背丈でも随分屈強な男と組まされた。そうしていつも押さえ込まれる。どうも強いと思ったら、相手はレスリング部員なのである。
「お、また負けたのか。一本ぐらい取ってみろ」と、先生は取れるはずがないとわかって木寺を煽る。
 木寺は「俺が本当に一本でも取ったら、お前の教えがなってないってことじゃぁないか、クソ筋肉野郎が」と陰で先生をこき下ろす。自分はそれを眺めてニヤニヤした。
 ある時、滋野が組み合いながら「へやっ!」とか「だーっ!」とか云い出した。
「ウルトラマンだ!」
「ウルトラマーン!」
 自分たちは口々に喝采を送ったが、先生には「うるさい」と怒られた。滋野はバツの悪い顔をして、自分はそれを眺めながら、やっぱりニヤニヤした。

 昭和のウルトラマンは「へやっ」「だー!」「シュワッ」と発声するが、喋ることはほとんどなかった。人間とのコミュニケーションは、顔を見て頷く程度だったように思う。
 先日、電車の中で「へやっ!」というウルトラマンの声がしたと思ったら、知らないおじさんのくしゃみだった。



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