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夜明けの湾岸

 近頃、過去に行なってきた悪戯のことを書いていたら、自分を指して悪裕と云う人が現れたけれど、そんなに云われるほど悪くはない。
 今回のは、これは自分でなく他人の悪戯である。

 初めて店長をやった横浜の店は、バイト同士の仲が随分良く、休みの日でもよく集まって遊んでいたらしい。
 ある時、バイトの芳本が車を買った。
 ちょうどフジテレビがお台場へ移る直前ぐらいで、お台場が整備されたのがニュースになっていたから、午前二時に店を閉めた後で見物に行った。恐らく、二時半ぐらいに出発したものだろう。
 そんな時間でもちらほら人はいて、自由の女神像がライトアップされていたりもする。できたばかりのお台場をみんなでひとしきり歩いて、帰る頃にはもう夜が明けていた。
 帰りの車内で、その頃流行っていたラルクアンシエルのアルバムを流していると、徹夜明けでハイになった中田と佐川が後ろの席で『ヘブンズドライブ』を大声で歌い始めた。
 あんまり楽しそうに歌っているものだから、運転席からこっそり後ろの窓を開けたら、通行人がみんな変な顔をして見て行った。二人は窓には一向気付かずに、とうとう最後まで歌い切ったらしい。
「ちょっとぉ! 芳本さん! 何してくれてるんですか!」
「まじ最悪ぅ。チョベリバー」
「いやぁ、めんごめんご。けらけらけら」
 その話を後になって芳本から聞いて、こいつそんな面白い悪戯をしたのか、と大いに感心した。そうして同時に、何だか負けたような悔しい心持ちになった。

 割と最近、仕事帰りに車の中でジュリーの『サムライ』を熱唱していたら、信号待ちの間に知らない人たちがちらちら見てくる。何だこいつらと思ったら、窓が少し開いていたので、甚だ恥ずかしい思いをした。それで芳本の話を思い出した。


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百裕(ひゃく・ひろし) よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。