喫煙・飲酒・悪者
出勤途中、コンビニの前に座り込んで喫煙するおばさんを見た。
いい年をして恥ずかしくないんだろうかと思い、きっと昔は不良学生だったに違いないということに片付けたが、ことによると不良に憧れる中途半端な学生だった可能性も否めないと思い至った。一度そう考えたらどうもそっちが正しいように思われて来た。
高三の時、自分は軽音部に所属して、文化祭を楽しみにしていた。在学中最後のライブをやることになっていたのである。ところが本番二週間ほど前に他の部員の喫煙がバレて、軽音部のライブは中止された。
自分は当該喫煙部員らを殺害しようと決意したけれど、当人らもさすがに責任を感じたようで、「文化祭の代わりに……」と並木通りのライブハウスを借り切る段取りをした。
これが自分のライブハウスデビューだとその当時は思っていたが、単にライブハウスのステージで演奏しただけで、デビューとは少しく違うと後から気付いた。
この時の演奏は、高校時代の自分のベストステージだったと思っている。
気分よくステージを降り、缶ビールを一本飲んで塾へ行ったが、後で考えるとこれだって学校にバレればただでは済まない案件だ。どうも自分は他人の喫煙をあんまりとやかく云える身分でもないらしい。たから結局殺害は断念した。
娘が幼い頃、妹のように可愛がってくれる友達のお姉ちゃんがいた。名前は璃ちゃんといった。
璃ちゃんは一日中でも娘の面倒を見てくれる。一緒に風呂にも入って身体を洗ったりしてくれる。だから娘も璃ちゃんに懐く。そうするといよいよ璃ちゃんは可愛がる。こちらにしてみれば、ありがたいことこの上ない。
一度璃ちゃんの中学校へ、運動会の応援に行った。果たしてひどく喜び、娘を連れて方々へ私の妹だと紹介して回った。
ひとしきり紹介した後で、璃ちゃんは遠くの男子を指差して、「あいつは不良だから駄目なんだわ」と教えてくれた。何が駄目かはわからないが、不良だったら駄目なのに違いない。
「どういう不良なの?」と確認すると、「学校に煙草を持って来て吸う」と言う。
なるほど、煙草は不良の定番アイテムだ、俺も高三の時に……と云いかけたところへ、璃ちゃんが「電子タバコだよ」と補足したので、自分は言葉を飲み込んだ。
電子タバコにしたって煙草は煙草なのだから、未成年が吸うなら不良である。しかしながら、どうも悪者感が幾分薄いようでもある。
全体、喫煙の悪者感は、己の欲求のために毒煙を撒き散らす傍若無人さに由来するのだろう。煙の出ない電子タバコを吸うのは周囲に配慮した結果のはずで、配慮をするような不良なら悪くない。後々自らの身体を悪くするだけで、他人に迷惑をかけるわけではない。これは果たして悪者だろうか。
そのように考えると、どうもちぐはぐな心持ちがして困った。
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