思い出のカレー
大学生の頃、高校時代の友人と二人で世田谷線沿線の日帰り旅をしたことがある。
どちらからそんなことをしようと言い出したのか、今となっては全く思い出せないけれど、どうして世田谷線なのかというと、それは私の大学の最寄り駅が下高井戸駅だったからだと思う。
京王線は毎日利用しているけれど、世田谷線は一度も乗ったことがない。あの電車、なんかレトロで可愛いよね、みたいな会話をした気がする。
三軒茶屋駅で待ち合わせて、世田谷線の旅が始まった。
最初は三軒茶屋から下高井戸まで乗るだけの予定だったのだと思う。ところが、いざ切符を買おうと券売機に向かうと、一日フリーパスの切符があることがわかった。それで途中下車をして街を散策しながらの日帰り旅になった。
丸一日かけて、何度も乗ったり降りたりを繰り返しながら旅をした気になっていたけれど、今回、路線図で確認してみると、降りたのは2駅か3駅。まんべんなく世田谷線沿線の街を見た気になっていたけれど、松陰神社前駅から宮の坂駅のあたりにずっといたようだ。記憶って当てにならない。
それでいて記憶は断片的に鮮明だ。
松陰神社前で降りて神社を見学したこと。近所を散策して、国士舘大学の脇の道を歩き、高校時代の同級生でこの大学に進学した子がいたので話題にのぼったこと、青空が広がっていて気持ちのいい気候だったこと。
ボロ市通りを歩き、変な名前の通りだと思ったこと、入った郷土資料館の展示室と展示室の間から見た外の景色。ちなみに今回記憶をたどって路線図や地図を見るまで、世田谷文学館を見学したのだと思っていた。企画展示が世田谷の文学者みたいな内容だったのだと思う。
資料館を出た時にはもうとっぷりと日が暮れていて、真っ暗な中、豪徳寺のたくさんの招き猫を見たこと。
だけど、この日帰り旅の中で、私の中で強烈に記憶に残っていて、いつかまた行きたいから絶対に忘れないでいようと思っていたはずのお店が、長い年月を経た今、すっかりぼんやりしたものになってしまったことに気がついた。
松陰神社前駅から宮の坂駅の間で、沿線近かったと思う。お店の前に可愛い原付か大きな犬(ゴールデンレトリバー)か、とにかく私がわー❤と思う何かがあった。このあたりの記憶の曖昧っぷりが本当にひどいと自分でも思う。
扉を開けると左側にオープンキッチンと奥に長く続くカウンター席、右側に小さいテーブル席。テーブルごとに窓があった…気がする。
おしゃれ、といっても女子ウケするようなお店でもないカレー屋さんだった。小さな店内はお客さんでいっぱいで、なんとか待たずに空いた席に座れた。インドカレーでもなく、欧風カレーでもなく、かといって家カレーでもない。ただ、強烈に美味しい!という記憶だけ残っている。
事前に調べてここに行こうと決めたお店じゃなく、歩いていてたまたま見つけたお店だった。ここにしてみる?くらいのノリで、私の中ではカレーか〜という若干後ろ向きな気持ちもありつつの選択だった。だから余計にやった!このお店にして正解!!みたいな喜びも含めて鮮明に覚えていたのだと思う。
あのお店はどの駅の近くにあったのだろう。松陰神社前駅から降りて散策したままたどり着いたのだろうか?お店を出て、ちょっと歩いたらホームだけの小さな駅に着いて、そのまま電車に乗った。
あのこじんまりとしたホームの様子や、家の間をすり抜けるように通っていく車窓の眺めなど、たった一度の沿線旅なのに鮮明に覚えている。
沿線旅をしたらまたあのカレー屋さんに巡り会えるだろうか。
