「怠けてるの?やる気がないの?」その子の"気になる行動"、実は原始反射が関係しているかもしれません
1.保護者と支援員の会話から
「先生、うちの子って、なんでこんなに落ち着きがないんでしょう。椅子にもちゃんと座れないし、鉛筆の持ち方もおかしいし、体育も苦手で…。本人なりに頑張ってるのはわかるんですけど」
放課後等デイサービスで働く先生のもとに、小学2年生・お母さんが、少し疲れた表情で話しかけてきました。
「最近どんな様子ですか?」
「授業中はずっとモゾモゾ動いてるって言われるし、工作も苦手で、鉛筆を持つとすごく力が入っちゃうみたいで。先生には"もっと丁寧に書きなさい"って言われてるんですけど、本人は一生懸命やってるんです。それがわかってるだけに、なんで?って…」
先生は、活動中に何度も椅子からずり落ちそうになりながら、それでも集中しようとしていた様子を思い出しました。
「お母さん、怠けているわけでも、やる気がないわけでもないと思います。もしかしたら、体の中にある"原始反射"というものが、まだ整理されていないだけかもしれないんですよ」
「原始反射…?それって何ですか?」
「赤ちゃんのころに持っていた、生きるための自動反応のことです。本来は成長とともに整理されていくんですが、それがうまくいかないと、本人の意思とは関係なく体が勝手に動いてしまうことがあるんです。はるくんが"座りにくい"のも、"鉛筆に力が入りすぎる"のも、もしかしたらそこに理由があるかもしれません」
お母さんの表情が、ほんの少しやわらぎました。「じゃあ、本人のせいじゃないってことですか?」
「そうです。気持ちのせいじゃないんです」
2.なぜその行動が起きるのか?専門的な視点で解説
「気になる行動」には、体からの理由がある
日常の中で子どもを見ていると、「なんでこんなことするの?」と首をかしげる場面が出てくることがあります。椅子にじっと座れない、鉛筆を強く握りすぎる、大きな音に極端に驚く、口をモゴモゴさせている、運動がぎこちない…。
こうした行動の多くは、「性格」や「育て方」の問題ではありません。発達の土台となる"原始反射"が、まだ体の中に残っていることで起きている場合があります。
原始反射とは、赤ちゃんが生まれながらに持っている生命維持のための自動プログラムです。成長とともに「統合」、つまり自分の意思でコントロールできる動きへと整理されていきます。しかし、この統合がうまく進まないと、本人が意識していなくても体が勝手に反応し続けてしまいます。
行動別に見る、原始反射との関係
①姿勢が崩れやすい・座っていられないのは、「姿勢が悪い」からではありません。頭の位置が変わると体が連動してしまう緊張性迷路反射(TLR)や、背中への刺激に体が無意識に反応するガラント反射が残っていると、どれだけ「まっすぐ座ろう」と思っても、体がそれを妨げてしまいます。これは根性や意志の問題ではなく、体の仕組みの問題です。
②手先が不器用・細かい作業が苦手なのも、練習不足ではない場合があります。手掌把握反射が残っていると、何かを持つたびに無意識にギュッと握ってしまいます。鉛筆を「繊細に動かす」ためには、まず「力を抜く」ことができる手が必要です。握りすぎてしまう体では、どれだけ練習しても思うように書けません。
③動きがぎこちない・運動が苦手なのも、体力や運動センスだけの話ではありません。モロー反射や恐怖麻痺反射(FPR)が残っていると、不意な音や揺れに体がびくっと反応し、「動き出すこと」自体に不安を感じやすくなります。運動が苦手な子は、実は「怖くて動けない」状態にある場合があるのです。
④集中力が続かない・落ち着きがないのは、体が常に"緊張モード"になっているからかもしれません。反射が残っていると、神経系が常にアラート状態になりやすく、外の刺激に意識が向きやすくなります。これは「注意力がない」のではなく、「体が休めていない」状態です。
⑤音や光に敏感すぎる・感覚過敏が強いのは、五感への刺激に対して防御反応が過剰に働いているサインです。無理に慣れさせようとしても逆効果になることが多く、安心できる環境の中で少しずつ感覚を整えていくことが大切です。
⑥言葉がはっきりしない・口がうまく動かないのも、原始反射と関係している場合があります。口は舌・唇・顎など多くの筋肉の連携で動いています。吸啜反射や探索反射が残っていると、この連携が妨げられ、発音のしにくさや口の過敏さとして現れることがあります。
大切なのは、これらの行動を「問題」として見るのではなく、「体からのサイン」として読み取ることです。反射が残っていること自体は悪いことではありません。「その子の体が今、助けを求めているサイン」なのです。
3.モロー反射の統合につながる!今日からできる運動あそびの提案
今回は、「落ち着きのなさ」「感覚過敏」「驚きやすさ」と深く関係するモロー反射に絞って、家庭や保育・支援の現場ですぐに取り入れられる遊びをご紹介します。
① 両手パーグーパー体操 〜「自分の意志で動かす」を覚える〜
両手を大きく広げてから(パー)、ギュッと握り(グー)、また広げる(パー)という動きをくり返します。この動きは、手を開いてから自分を抱きしめるというモロー反射の動きに非常によく似ています。違うのは「自分の意志で動かす」という点です。意識してこの動きをくり返すことで、脳が「反射ではなく、自分の意思で体を動かしている」と認識できるようになり、反射的なびっくり反応が少しずつ落ち着いていきます。リズムに合わせて楽しく行うのがポイントです。
② ゆらゆらバランスボール遊び 〜「揺れても大丈夫」を体で覚える〜
大人がやさしくバランスボールの上で子どもを揺らしたり、軽く跳ねさせたりすることで、「揺れても大丈夫」「動いても安心」と感じられる体験を積み重ねることができます。こうした身体の安定感が、「びっくりしにくい体」への土台になります。子どもが怖がらないよう、最初はごくゆっくり、小さな揺れから始めることが大切です。
③ ジャンプ抱きつき 〜緊張とリラックスの切り替えを練習する〜
大人に向かって子どもがジャンプして抱きつく遊びです。ジャンプする瞬間に体がふわっと浮くので、一時的に「びっくり」に似た感覚が生まれます。あえて緊張する体験をしたあとに、リラックスできる状態に戻るという「気持ちの切り替え」の練習にもなります。「ここに飛んでおいで」と両手を広げて待つ大人の存在が、安心感の土台になります。
④ 抱っこ&ハグで心の土台をつくる 〜オキシトシンで安心感を育む〜
遊びの締めくくりには、ぜひギュッと抱きしめてあげてください。ハグをすると、脳の中では「オキシトシン」という「愛情ホルモン」が分泌され、心を落ち着かせる働きを持っています。信頼できる大人にギュッと抱きしめられることは、子どもにとって「安心できる場所がある」と感じられる、とても大切な体験です。モロー反射は「危険を感じたとき」に働く反射だからこそ、「ここは安心していい場所なんだよ」という感覚を、ふれあいを通して繰り返し伝えてあげることが何より大切なのです。
4.もっと深く知りたい方へ 〜メンバーシップのご案内〜
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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続きの有料エリアでは、これらの遊びがスポーツの動作とどのようにつながっているか、そして子どもの成長にどんな影響を与えるのかを、療育専門家の視点からさらに深く解説しています。
「なぜこの遊びが効くのか」を知ることで、日々の関わりに自信と根拠が生まれます。子どもと一緒に遊ぶ時間が、もっと豊かになるヒントが詰まっています。
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