ショートショート 『夢も自己責任』
行政の案内は、基本わかりにくい。届いたハガキを読んでみたけど「はぁ?」って感じだ。どうやら“夢の配達サービス終了のお知らせ”らしい。良い夢をみたければ自己責任でと言う事だ。
面倒だ。別に夢なんか見なくても良いやと思ったがそうもいかないらしい。地上は悪夢で満ちていて、何もしなければ今後、悪夢100%確定だ。
勘弁してよ。ただでさえストレスな生活なのに寝てまで苦しむなんてまっぴら御免だ。良質の夢は「空にひらく小さなドア」の中にあるらしい。
……じゃ、飛んで行かなきゃ取れないじゃん。
空を飛ぶのなんて幼稚園の頃までで最近は空を飛んだ事なんてない。それにいい大人が平日の昼間っから空なんか飛んでたら近所の笑い者だ。でも背に腹は代えられない。花粉症の涙目に痛い腰を庇いながら飛ぶ。……何とか飛べそうだ。
辿り着いた空のドアの前で「引換券を提示して下さい」と言われる。あのハガキらしいけどポケットにない。途中、雲で休んだ時に落としたのかもしれない。「雲の上の忘れ物」は、ちゃんと地上の交番に届けられていた。上空に一時預り所くらい作れよ、と思うが――それは悪質クレーマー。ここは我慢、自己責任だ。
また飛び直す。いい大人が一日何回も空を飛ぶなんて、本当にもういい笑い者だ。
そんな思いまでした夢だ。とびっきり良いヤツを頼みたい。ウハウハでモテモテでイケイケなヤツにしたいけど、対面での注文となると、何だか恥ずかしい。
結局「静かな湖畔で小鳥の囀りを聞きながらのんびり」的な夢を注文した。…そんなに楽しみじゃない。
出だしが遅かったので、もうすぐ夜になる。急がないと。でもそんなに楽しみじゃない夢の扱いはいい加減で、またポケットの縁からこぼれ落ちる。「夜のすきまに落ちた夢」はもう戻らない。
悪夢で眠るか、眠らずに朝を迎えるか。
――どちらも自己責任だ。
(了)
※下記、片桐みかん様の企画に参加させて頂きました。
#3つのお題に空想のひらめきを
🍊第42回 3つのお題
🎈お題①:「空にひらく小さなドア」
🐾お題②:「雲の上の忘れ物」
⏳お題③:「夜のすきまに落ちた夢」
