ファンタジー掌編 『泣き虫おに』
求人広告を出しても出しても、応募がない。
学生も、外国人も、シルバー人材も、まったく来ない。
困っていると人事部から内線が入った。
「飛び込みで面接希望が来ていますが、いかがしますか」断る理由はない。「会うよ」即答だ。
面接室のドアを開けると
――鬼が座っている。灰青色で角は一本。半裸。
「……青鬼ですか?」と聞くと「アースブルーです」と笑顔だ。
話を聞くと、節分のイベント以降、仕事がないらしい。なるほど、それは厳しい。鬼を必要とする行事は、そうそう多くない。
以前はカミナリ様の仕事の下請けもしていたが高所恐怖症で続かなかったらしい。
他に何ができますか?と聞くと、最近はコンプライアンスの関係でできる仕事が減っているのだそうだ。鬼は、申し訳なさそうに、大昔の実績をまとめたレポートを差し出す。
・村の襲撃。
・家屋の破壊。
・爺婆への威嚇。
箇条書きでまとめられていて読みやすい。
読みやすいけど使えない。
……パソコンは?と聞くと「基本的なExcelとWordであれば」とのこと。試しに社内システム名を伝え使えるか聞くと「初めて聞きました」と俯く。正直だ。「正直だね」と言うと「嘘もつきます」とまた俯く。
雑用的な仕事になるけど大丈夫?と聞くと「大丈夫です」と即答だ。
採用することにした。クールビズだけど、シャツくらいは着てきてねとお願いすると「承知しました」と礼儀正しい。
帰り際、青鬼は安堵でうっすら目に涙を浮かべている。
小さい頃読んだ絵本を思い出した。青鬼は、やっぱりいいヤツなんだなぁと思い久しぶりに胸が熱くなった。
(了)

※下記、片桐みかん様の企画に参加させて頂きました。今回、お題③の作品です。
#3つのお題に空想のひらめきを
🍊第51回 3つのお題(日本むかし話)
🎈お題①:「桜を咲かせる猫」
🐾お題②:「月夜のもちつき」
⏳お題③:「泣き虫おに」
