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ベター・コール・ソウル

 海外ドラマ『ベター・コール・ソウル』の最終シーズンの最終話をついに見た。終わってしまうのがどうしても名残惜しくて、最後の一話だけを見ずに長い間とっておいたのである。もはや記憶が薄れていたこともあり、僕は気合を入れて前作の『ブレイキング・バッド』の一話目から一通り見直した。これで全部で5シーズンの『ブレキング・バッド』は四周、6シーズンの『ベター・コール・ソウル』は最終話を除いて二周したことになる。折に触れては特定のエピソードやシーンだけを部分的に見直したりもするので、感覚としてはもっと見ている気がする。

 僕は個人的な人間なので、自分の好きなものを他人に勧めることはほとんどなく、一人で勝手に楽しんでいる場合が多い。それを誰かと共有したいという発想があまりない。しかし、この二作についてはちょっと話が別である。欧米での圧倒的な人気と評価に比べると、この二つの海外ドラマの日本での知名度は不当なまでに低い。一度それに業を煮やし、僕は一人の友人を説得して自らのNetflixのアカウントを共有したことがある。彼は一ヶ月ほどでその時点で公開されていた全てのエピソードを一気に見通し、睡眠不足に陥って仕事に支障をきたした。
 一方で英語圏の人間と会話する際に『ブレイキング・バッド』は話の種になり易く、見たことのない人でも存在自体はほぼ必ず知っている。映画でいうところの『ショーシャンクの空に』とか『ゴッドファーザー』のような名作として認識されており、色々なところで引用されていたりネットミームにもなっていたりする。エミー賞やゴールデングローブ賞も獲っており、シーズン5は世界で最も評価されたテレビシリーズとしてギネス世界記録に認定されている。言うまでもなく日本でも一定の評価は勿論あり、有名人の視聴者には北野武や村上春樹などがいる。

『ブレイキング・バッド』は五十歳で高校の化学教師であるウォルター・ホワイトが主人公である。ある日、彼は癌で余命数年であると宣告を受け、多額の医療費が必要となる。義弟や旧友から支援の申し出があったもの、自らの力で稼ぎたかったウォルターは、化学の知識を活かして覚醒剤の製造・販売に望みをかける。彼は麻薬取引については何も知らなかったため、中退した元教え子で売人のジェシーと協力してビジネスを始める。元々優秀な化学者であったウォルターが品質にこだわって作った高純度の覚醒剤はたちまちストリートで広がり、やがて大物ドラッグディーラーにもその存在を知られるようになる。次々と発生する危険なトラブルに最初は怯えていたものの、彼は次第に悪へと染まっていき、そこに自信やプライドを見出し始める。
 『ベター・コール・ソウル』はスピンオフ作品で、『ブレイキング・バッド』でウォルターの資金洗浄などを手伝う弁護士のソウル・グッドマンが主人公となっている。時系列としては『ブレイキング・バッド』以前の物語である。ソウルはネイルサロンの片隅に小さな個人事務所を構え、刑事事件の公選弁護を主な業務として行なっている貧乏弁護士だった。弱者や老人をいたわり暴力を嫌う性格で根は優しいものの、規則のある環境が性に合わず悪知恵を働かせては型破りで破天荒な行動をとる気質があった。優秀な弁護士である兄との絆と確執、元同僚で親友でもある女性弁護士のキムとの関係の変遷などを経て、訳ありの犯罪者を主なクライアントとして持つようになるまでの過程とその後が描かれている。

 あらすじをざっくりと書いてみたけれど、説明すればするほど魅力を伝え切れていない自分に苛々して仕方がない。想い入れが強過ぎてどこをどう端折って良いのか分からないのである。とにかく、合計して11シーズンにもわたり、これほどまで破綻なくずっと面白くなり続けたまま完結したシリーズはちょっと他にはないだろう。
 最後に紹介しておきたいのだけれど、『ベター・コール・ソウル』の最終シーズンの第十二話で、キムがバスの中で泣く有名なシーンがある。映像はモノクロでセリフは一切ない。彼女はシリーズを通して描かれてきた物語の顛末を想い、公共の場で泣くまいと必死に堪えながらもどうにも抑え切れずに嗚咽する。装っていた平静が徐々に崩れていく様子は、ちょっと演技という域を超えている。

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