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『国宝』の後に観てほしい映画 ―― 溝口健二監督『残菊物語』



小説『国宝』を読み終えたとき、あの世界の余韻にまだ浸っていたいと思いませんか?
そんな時にぜひおすすめしたいのが、溝口健二監督の映画『残菊物語』です。


『国宝』という小説の深み

著者・吉田修一さんは、芥川賞作家でありながらエンタメ作品も書く変幻自在な小説家。
実は「国宝」とは正式は呼び名ではなく、文化庁によると本来は「重要無形文化財保持者」というそうです。「国宝」という、人々の口に上る“通称”を題名に採用したところに、歌舞伎という特別な世界を描こうとした吉田さんの思いを感じました。
物語には4人の「死」が描かれています。

・喜久雄と俊介:最期まで役者として生き抜いた人たち。

・万菊と俊介の父:役者を極めながらも最後には一個人としての安息や家族の思いを求めた人たち。

誰が至高ということではなく、4人を通じてみることで歌舞伎の生々しい世界が立ち上がってきます。


「血」か「芸」か ―― 歌舞伎役者の宿命

歌舞伎の家系は徳川時代から続きますが、「男系男子の世襲」だけではありませんでした。
顔立ちの良い子を養子に迎え、役者として育てるのも当たり前であった時代もあります。養子の貰い先も「ワケあり」であることも多く、やくざの子であるという喜久雄の設定も実際のところ、むしろリアルだったというのも驚きです。


スキャンダルな実話から生まれた『残菊物語』



しかしながら歌舞伎の歴史を調べると、養子にまつわる話はいくつかあります。
有名なのが、2代目尾上菊之助のスキャンダル。
がら芸を深め、やがて復帰するためには恋人と別れざるを得なかった――波乱の人生です。
この実話を小説化したのが村松梢風の『残菊物語』であり、溝口健二監督作品の映画が有名です。


『国宝』と『残菊物語』が重なる瞬間



吉田修一さんはこの映画『残菊物語』を観たのが『国宝』執筆の入り口だった」と語っています。
特に「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」の踊りに惹かれ、喜久雄の登場シーンにも同じ演目を選んだそうです。
『残菊物語』の「積恋雪関扉」のシーンを観ると、喜久雄と徳次が無邪気に踊っていた『国宝』の冒頭が脳裏に蘇りました。この直後から喜久雄は苦労の道を歩みます。
菊之助の親友・福助が「きくちゃん」と呼ぶ声に、喜久雄の姿がダブリ、こちらの涙腺も崩壊しました。


モノクロが映す歌舞伎のリアル


『残菊物語』は「1シーン1カット」と称賛される映像美を誇り、当時の歌舞伎の息づかいを鮮やかに写し出します。
表では褒めそやし、裏では悪口を言う人々。役者を待つ女性たち。大名跡や人気に左右される世界……歌舞伎がいかに大衆のもので、話題の中心であったかを感じさせてくれる作品でした。


まとめ


『国宝』を読んだ後に『残菊物語』を観ると、歌舞伎の舞台裏に流れる血や業、愛や孤独がさらに鮮やかに見えてきます。
物語と映画がシンクロして、心がぶわんぶわんと揺れるはず。
ぜひ、『国宝』物語の余韻を抱えたまま、この名作を体験してみてください

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