くじら18号
先日、地元ローカルニュースを流していると小学生が課外授業で鯨料理を作ったという話題を伝えていた。
見るともなしに耳で聞いていると、最近の子ども達は鯨を食べたことが無く調理する手もおっかなびっくりだったとの事である。
その日は唐揚げと竜田揚げ、刺し身を作って食べたそうでインタビューに答える小学生は初めは緊張したけど楽しかったとか美味しかったです!元気いっぱいに答える男子もいて微笑ましかった。
私の住んでいる山口県は下関市に沖合商業捕鯨船の基地があり、鯨は今でも身近な存在である。
スーパーには冷凍になっている刺身用のサクが置いてありお総菜コーナーでは当たり前のように竜田揚げが並んでいる。
まだ捕鯨が自由に行えていた私が子どもの頃は夕飯にもたびたび鯨料理が並んだ。
鯨の刺し身はショウガ醤油で食べると魚ではないので鼻に抜ける獣臭と強烈な血の味がしてあまり得意ではなかった。
祖父や父は好物だったらしく普段あまりつまみを食べずにお酒ばかり飲んでいたのに鯨の刺し身はとても美味しそうに食べていた。
生の鯨は苦手だったが火を通すと噛めば噛むほど旨味が溢れてくる素敵な食材だった。
家で出てくるのはもっぱら唐揚げでレモンを絞って食べると、ああ鯨だとすぐに分かる独特の風味があった。
揚げすぎたり、冷めるとカチカチに乾いたするめを齧る位歯に力をこめないと噛み切れなかった。
他には鯨ベーコンも脂が乗っていてこれは私の口にも合った。
どうしても理解できなかったのがおばいけで、鯨の尾びれを薄くスライスしてボイルして冷ましたものを酢味噌で食べる。
これが何の味もしなくてただクニクニと弾力のある食感が歯を押し返してくる。
正直ちっともおいしくなかったが、飲んべぇの祖父と父はおっ、おばいけかといって嬉しそうに箸を伸ばしていた。
これだけ多彩な鯨料理が食卓に上った理由としては何といっても安かったの一言に尽きるだろう。
もちろん給食にも頻繁に登場し、鯨の竜田揚げは懐かしい味である。
これは好き嫌いのはっきり分かれる揚げ物で苦手な子はいつまで経っても完食できずにお昼休みになっても午後の授業が始まっても手を付けられずに放課後まで残される事もあった。
給食は一度に大量に作るので血抜きやに臭い消しの調理工程を余り丁寧にやっていなかったのか家で食べる竜田揚げよりはワイルドでダイレクトに獣の味がした。
私はそれが良いんじゃんと言いながら嬉々として頬張っていた。
同じ班で竜田揚げに苦戦している子がいると先生にバレないようにこっそり貰ってむしゃむしゃと食べたものである。
鯨嫌いでも要領のいい子はビニール袋を持参しており、その中にバサバサと竜田揚げを入れて机に隠していた。
その竜田揚げは放課後に当時はどこにでもいた野良犬にあげて証拠隠滅を図る抜かりの無さだった。
鯨の力強い味わいは癖になった人にはたまらない美味である。
ハマらなかった人には苦い思い出しかないかもしれないが。
不思議なのは鯨は哺乳類なのにスーパーでは鮮魚扱いな事である。
この辺りには何やら繊細な問題が潜んでいそうなのであえて深堀りはしないでおこう。
地元ではまだ流通しているとはいえ昔と比べてかなりの高級食材になってしまった。
たまにスーパーで買おうかどうか悩むが、一日に使える食費の大半をつぎ込まなくてはならないのでためらってしまう。
そもそも捕鯨は日本の伝統漁であり、山口県以外にも色々な地域でウチはまだ鯨はメジャー食材ですよという所もあると思う。
しかし先日のニュースを見た限り令和の子ども達が日常的に鯨に親しんでいる印象は受けなかった。
ウチも妻は以前は苦手意識があってあまり口にしなかったが母直伝の唐揚げを振舞うと目の色変わって今では鯨の唐揚げは年に一度か二度登場する冬のスペシャルメニューに昇格した
もう一つ素敵な食べ方は水菜と一緒に煮て食べるはりはり鍋である。
これは鯨から美味しいダシが染み出してきてどんどん旨味が濃くなって、さらに水菜がそのエキスに絡まるのでかなり美味しい癖になる味。
この食べ方は関西圏でメジャーだと思う。
そういえば子どもの頃は家で鯨のすき焼きも食べていた。
牛肉は昔から高根の花だったので馴染みあるのは俄然鯨だった。
日本人の貴重なたんぱく源だった鯨をもっと気軽に食べられる日がまた来ますようにと願いながら昨日の晩御飯の話をちょっとだけ。
昨日は甘塩の北海道産の鮭が特売だったのでメインは焼き鮭で決まり。
副菜は厚揚げを食べやすい大きさに切り分けトースターでこんがりと焼く。
味付けはめんつゆ、ねぎを散らして出来上がり。
後はご飯に合う細々したおかずに自家製の煮干しと鰹節のソフトふりかけと梅干し、ひきわり納豆、味付け海苔をササっと用意。
みそ汁の具はキャベツと玉ねぎ。
これで焼鮭定食の完成。
妻と一緒にいただきます。
昨日も休肝日。
自分偉いぞと思いつつ納豆をかき混ぜてご飯の上に大胆に乗せる。
それを牡蠣醤油味のついた焼きのりで包んで口に運ぶ。
これがめっぽう相性がいい。
次は鮭の実をほぐして同様の手順でハムリ。
甘塩の鮭は塩加減がちょうど良くて身もふっくらとしておりかなりいいお味。
妻はこの簡易海苔鮭ご飯がいたく気に入ったようでご飯のお代わりをしていた。
私が、おっ珍しいと言うとだって美味しんだもんと言ってパクリパクと元気いっぱいに口に頬張っていた。
その姿がリスみたいで可愛いなと思いつつ私も負けずにモグリモグ。
ふりかけも煮詰めないでふっくらと仕上げたのでご飯との相性が良かった。
味噌汁を時折飲みつつ、正調焼き鮭定食の夜は和やかに過ぎていった。
私もご飯のお代わりをしたので二合炊いたお米がほぼなくなってしまった。
ご馳走様をして妻によく食べたねぇと言うともう動けないと言ってパタンと横になった。
その姿を見つつ後片付けをしておやすみなさい。
皆さんのお住まいの地域では鯨を今でも食べられていますか?
大人になって改めて真剣に味わうと美味いもんだなぁと思います。
合わせるお酒は日本酒が良いように思います。
鯨食は立派な日本の文化なのでこれからも絶えることなく続いていってほしいなと思います。
願わくば昔のように鶏肉より安いお値段で買えると気軽に手を出せるのですが。
まあそれはこれからに期待しましょう。
伝統食バンザイ。
