文学を買う

文学書(?)を五つ買おう。現時点では(めちゃくちゃ大きい本屋さんの文学の棚をある程度見た私は)そう思っている。

内訳として、いまのところは俳句で二冊、短歌で二冊、その他で一冊ということにしている。一応。「その他」はほとんど決まっている。安部公房・三島由紀夫・大江健三郎『文学者とは何か』である。なんとなくこれにする。というか、他のものを知らなさすぎて、というか、そもそも別に何冊かも決めていなかった。

ちなみに俳句と短歌は割と歴史的なもの、歴史がわかるようなものを買おうと思っている。というか、一冊は決まっている。短歌のほうである。髙良真実『はじめての近現代短歌史』である。

なんとなく、髙良真実『はじめての近現代短歌史』は買おうと思ってこのめちゃくちゃ大きい本屋に来た。そして、じっくり見たことはない俳句や短歌の棚を見た。じっくり。私は気がついた。私は鑑賞したいのだ、と。そして、実作(俳句を作ったり短歌を作ったりすることはこう呼ばれがちである。たぶん。)はその助けになるものとして考えているのだと。鑑賞と実作、もっと大きくすれば表現と受容、それらがこのように連動すると思うのは私の特徴である。連動しやすいとか、連動する形態とか、そんなものを考えるのも面白いが、とりあえず五冊選びたい。あと三冊である。とりあえず。

俳句もほとんど決まっている。二冊とも。一冊は正木ゆう子『現代秀句』、もう一冊は小澤實『名句の所以』である。一応もう少し迷う予定だが、上に挙げた二冊よりは確定はしていないが、この二冊にするつもりである。小澤のほうはここで見つけた。正木のほうはここに来る前にすでに見つけていた。

だから、あと短歌一冊決めればいいのだ。とりあえずは。がんばります。ここは大きい本屋さんなので縦に七個に区切られた棚の一つ、そしてそこから溢れるくらいに短歌関連の本がある。めちゃくちゃ嬉しい。めちゃくちゃ大きい本屋さんでめちゃくちゃ嬉しい私。

めちゃくちゃ良さそうな本を見つめてしまった。歴史がわかるものを、という要望には答えていないかもしれないが………。それは川野里子『幻想の重量 葛原妙子の戦後短歌』である。私は別に葛原妙子についてほとんど知らない。小津夜景が『なしのたわむれ』で、どんな歌かイメージしか覚えていないのだが一首紹介していたのを覚えているだけである。帯にはこう書かれている。「幻想の女王、魔女、黒聖母、ミュータント……こうした呼び名を剥がしつつ迫るその全貌。いよいよ存在感を増す葛原妙子を通して戦後の短歌史を問い直す名著の新装版」と。最後を特に読もう。「戦後の短歌史を問い直す」?「名著の新装版」?、ぴったりじゃないか!と思った。にこにこ。一旦戻す。棚に。

他のものを見つつ、なんとなくもはや川野里子『幻想の重量 葛原妙子の戦後短歌』にしようと思っている。だから他の棚、近くの、詩の棚、に行ってしまった。「その他」が増えていきそうになったり、堀田季何『俳句ミーツ短歌』とか、『短歌と俳句の五十番勝負』とか、二つに跨るものを見つけてしまったりする。『ねむらない樹』という雑誌が書肆侃侃房から出ていることを初めて知った。その2024vol.11に「わたしの短歌入門」という、とても面白そうな企画があった。が、全体ではなくそこだけが気になったのでやめておこうと思った。ただ、面白そうではある。私も『現代思想』を読むときは全部読むわけではないのだから別にそんなことは気にしなくてもいいのかもしれない。そんなことを言われるとどうも決められない。『文学は実学である』とか『カッコよくなきゃ、ポエムじゃない!萌える現代詩入門』とかも「その他」に入れたい!『名句徹底鑑賞ドリル』とか、『俳句名人になりきり100の発想法』とか、『俳諧の詩学』とか、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』とか、『俳句いまむかし』とか、『現代俳句の鑑賞101』とか、『森澄雄の百句』とか、『海のうた』とか、『月のうた』とか、『すごい短歌部』とか、『大人のための恋歌の授業』とか、『いちばんやさしい短歌』とか、『楽天生活』とか、『現代短歌版百人一首』とか………。羅列することに夢中に、羅列を享楽してしまったが、私はまだ迷っている。し、迷うことが気持ちよくなってすらいる。ちなみにここまでの並びは並べられている順番をなぞったものなので私がいる「めちゃくちゃ大きい本屋さん」がバレてしまうかもしれない。にこにこ。

座っていたら、立ったら立ちくらみがした。本棚につかまってことなきをえた。もし倒れていたらことありだった。ことなきではなく。危ないからそろそろ決めて帰ろう。危ないから。にやにや。マスクをしているからバレていない。めちゃくちゃ俺を見ている人がいなければ。

重みに押しつぶされて、立ちくらまないように軽く見た。軽く生きた。

いろいろなこと(持っている本とか、値段とか、本来の目的(?)とか?)を考慮して、この五つにした。俳句は正木ゆう子『現代秀句』、ひらのこぼ『俳句名人になりきり100の発想法』、短歌は髙良真実『はじめての近現代短歌史』、川野里子『幻想の重量 葛原妙子の戦後短歌』、そして「その他」は堀田季何『俳句ミーツ短歌』にした。本を選ぶこと、買うことは不思議なことだ。では、買ってきます。

袋代含めて11115円。なんだかおもしろい。

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