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皮翼目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(ヒヨケザルから転送)
皮翼目
フィリピンヒヨケザル
フィリピンヒヨケザル Cynocephalus volans
地質時代
暁新世 - 完新世(現代)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
界 : 動物界 Animalia
門 : 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
綱 : 哺乳綱 Mammalia
上目 : 真主齧上目 Euarchontoglires
目 : 皮翼目 Dermoptera
学名
Dermoptera Illiger, 1811[1]
和名
皮翼目[2]

皮翼目(ひよくもく、Dermoptera)は、哺乳綱に分類される目。ヒヨケザル目とも呼ばれる[3]。

特徴

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フィリピンヒヨケザルの剥製
マレーヒヨケザルの骨格標本(スミソニアン博物館蔵)

現生群は、ヒヨケザル科の1–2属のみで、ヒヨケザル(日避猿)[4]と総称される。ネコザル(猫猿)[4]、コウモリザル[5]の別名もある。東南アジアの熱帯地方に生息し、フィリピンヒヨケザルとマレーヒヨケザルの2種のみが知られている[6][7]。ヒヨケザルの属名Cynocephalus は、「イヌの頭」という意味のラテン語から来ている[4]。和名で「サル」の語がつくのは、キツネザルに似た頭部の外見からで、英名も「flying lemur(空飛ぶキツネザル)」である[8]。

ヒヨケザルは、体長約35-40cm、体重1-2kgのネコくらいの大きさの夜行性の動物で、ココヤシやパンヤノキなどの樹上で生活する[9][10]。体格は細身で、四肢は比較的長く、前脚と後脚がほぼ同じ長さをしている。頭部は小さく、両目が(ヒトを含むサル類と同様)顔の正面に位置しており、遠近感をとらえる能力に優れている。これらの特徴は、木々の間を滑空するのに適したものである[11][12]。

ヒヨケザルの最大の特徴は、首から手足、そして尾の先端にかけて、飛膜と呼ばれる膜をもつことである[13][14]。この飛膜を広げることで、高さ20mの木からなら120mの距離を滑空することができ、方向や速度を巧みに変えながら森林の木々の間を移動している[15]。飛膜をもつ哺乳類としては、翼手目(コウモリ)の他、ネズミ目(齧歯類)のムササビ、モモンガやフクロネズミ目(有袋類)のフクロモモンガなどが知られているが、いずれも飛膜は前肢と後肢のあいだにあるのみで、首から尾にわたるヒヨケザルのものほど発達した飛膜をもつ哺乳類の動物は知られていない[16][17]。コウモリのようにはばたくことはないが、滑空中に尾を動かして後肢と尾の間の飛膜で扇いで推進力を生み滑空距離を伸ばしている[18][19][20]。このため滑空能力は高く、150mの距離を15mの降下で移動できる[8]。

また、5本の指にも膜があり、指を動かして広げたり縮めたり手首を回したりすることで、空気の抵抗を変え、飛ぶ方向を変えることができる[19]。首周りの三角形状の飛膜は、飛んでいるとき膜のへりに2本の渦の流れができる。飛膜が三角形の場合は渦の流れは4本になる。背中側に生まれたこの流れが、膜の上の気流を整える。これにより失速を防いでおり、低速での飛行が可能となっている[要出典]。

鋭い5本のカギ爪で木に登り、昼間は枝にぶらさがったり樹幹にしがみついたりして、枯葉や幹の一部に擬態して休み、ほとんど活動しない[21]。

ヒヨケザルは臆病な動物であり、夜行性でもあるため、その生態はほとんど知られていない。草食性であり、よく発達した胃をもつ(中に消化を助けるバクテリアが棲んでいる)ため、木の葉を消化することができる。葉、若芽、花、樹液などを主食としており、恐らく果実も食べていると考えられる。切れ目の入った扁平なクシ状の特殊な形状をした下顎切歯をもつ[22]が、この切歯で樹液や果汁などを濾しとって食べる[23]。また、同時に毛づくろいにも用いていると考えられている[24]。こうした形状の切歯は、他の哺乳類には例がない[25]。ヒヨケザルは特定の寝ぐらを持たないため、子育ての際は、子供を包むように飛膜を広げ世話をする。また、子供が母親の排出する糞を舐めるのは、ここで自らの胃の中のバクテリアを取り込むためである[26]。

分類

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位置づけ

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下位分類

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以下の現生種の分類・英名は、Stafford(2005)に従う[1]。和名は川田ら(2018)に従う[2]。

発見当初より分類に異論が多く、顔がキツネザルに似ていることや原始的な霊長類とされたプレシアダピス科との酷似から霊長類(サル類)、コウモリの胎児に似ていることから翼手目(コウモリ目)、食虫目(モグラ目)などに入れられた他、真獣類でなく有袋目の可能性まで上げられたが、現在では皮翼目として目単位で独立させるのが主流である。この皮翼目の位置も食虫目から翼手目に進化する途中形態としたり、前述のプレシアダピスを霊長類ではなくその近縁の別グループ(プレシアダピス目)としてこちらから分岐したのがヒヨケザルとして皮翼類は霊長類(サル類)に近縁のグループ[8]で、併せて霊長形類(Primatomorpha)という系統群をなすとする考えもある。

1990年に、以前から知られていた絶滅属パロモミスの化石に、ヒヨケザルの手の骨と同様な特徴が発見された[27]。これにより、従来プレシアダピス目に含められていたパロモミス科はヒヨケザルの仲間(皮翼類)に移されたが、同時に、このパロモミス類を含む皮翼類を、従来のような独立した目から格下げしてサル目(霊長目)に含め、直鼻亜目・曲鼻亜目と並ぶ第3の亜目(ヒヨケザル亜目 / 皮翼亜目)とする説もあった[28]。しかし近年はその説は否定されている[22]。

†は絶滅

画像

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出典

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  1. 1 2 Brian J. Stafford, "Order Dermoptera," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Page 110.
  2. 1 2 川田伸一郎他 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  3. ↑ 田隅本生「哺乳類の日本語分類群名,特に目名の取扱いについて 文部省の“目安”にどう対応するか」『哺乳類科学』第40巻 1号、日本哺乳類学会、2000年、83-99頁。
  4. 1 2 3 『標準原色図鑑全集19 動物I』、林壽郎、株式会社保育社、1968年、p.64
  5. ↑ C.ダーウイン 著、堀伸夫 訳『種の起源』クラルテ社、1950年、245頁。
  6. ↑ 片山 2008, p. 8.
  7. ↑ 馬場 2008, p. 123.
  8. 1 2 3 今泉忠明『世界珍獣図鑑』人類文化社、ISBN 4-7567-1188-X、2000年、p.42-43「ヒヨケザル」
  9. ↑ 片山 2008, p. 18.
  10. ↑ 馬場 2008, pp. 121–141.
  11. ↑ “Natural History Collections: ORDER DERMOPTERA” (英語). Natural History Collections. Edinburgh University. 2026年8月8日閲覧。
  12. ↑ “Massive eyes, exceedingly long intestines and a flying cloak - meet the almost unfathomable colugo” (英語). Discover Wildlife. BBC. 2026年8月8日閲覧。
  13. ↑ 片山 2008, p. 22.
  14. ↑ 東 2008, pp. 117–118.
  15. ↑ 片山 2008, p. 74.
  16. ↑ 東 2008, pp. 112–118.
  17. ↑ 内田 照章「翼手類の類縁に関する綜説」『哺乳類科学』第4巻第1号、日本哺乳類学会、1964年、13-、doi:10.11238/mammalianscience.4.1_13。
  18. ↑ 大島光春「研究ノ ー ト 空飛ぶ動物のつばさ」『自然科学のとびら』第4巻第4号、日本哺乳類学会、1998年12月15日、26頁。
  19. 1 2 片山 2008, p. 73-74.
  20. ↑ 東 2008, p. 118.
  21. ↑ 片山 2008, pp. 24–36, 76–77.
  22. 1 2 『新版 絶滅哺乳類図鑑』157 頁
  23. ↑ 『世界哺乳類図鑑』 95頁
  24. ↑ 馬場 2008, p. 145.
  25. ↑ 『脊椎動物の進化』 335頁
  26. ↑ 片山 2008, p. 50.
  27. ↑ 名取真人「被子植物の森とサル類の歯の進化」『化石研究会会誌』第28巻1/2、化石研究会、1995年12月、1-10頁。「Bread, 1990」
  28. ↑ 『絶滅哺乳類図鑑』 136頁

参考文献

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  • 富田幸光『絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2002年、136頁。ISBN 4-621-04943-7。 
  • ジュリエット・クラットン・ブロック『世界哺乳類図鑑』ダン・E・ウィルソン、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、95頁。ISBN 4-7875-8533-9。 
  • エドウィン・ハリス・コルバート、マイケル・モラレス 著、田隅本生 訳『脊椎動物の進化(原著第5版)』築地書房、2004年、335頁。ISBN 4-8067-1295-7。 
  • 富田幸光『新版 絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2011年、157頁。ISBN 978-4-621-08290-4。 
  • 片山龍峯 著「空を飛ぶサル?ヒヨケザル」、片山龍峯 編『空を飛ぶサル?ヒヨケザル』八坂書房、2008年8月。ISBN 978-4-89694-916-2。 
    • 長谷川政美 著「解説その一 ヒヨケザルは霊長類に一番近い親戚」、片山龍峯 編『空を飛ぶサル?ヒヨケザル』八坂書房、2008年8月。 
    • 東昭 著「解説その二 ヒヨケザルの飛行の特色」、片山龍峯 編『空を飛ぶサル?ヒヨケザル』八坂書房、2008年8月。 
    • 馬場稔 著「解説その三 マレーヒヨケザルの生態」、片山龍峯 編『空を飛ぶサル?ヒヨケザル』八坂書房、2008年8月。 

関連項目

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