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西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか
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戦争は〝世界のリアル〟を暴く試金石で、すでに数々の「真実」を明らかにしている。勝利は確実でも五年以内に決着を迫られるロシア、戦争自体が存在理由となったウクライナ、反露感情と独経済に支配される東欧と例外のハンガリー、対米自立を失った欧州、国家崩壊の先頭を行く英国、フェミニズムが好戦主義を生んだ北欧、知性もモラルも欠いた学歴だけのギャングが外交・軍事を司り、モノでなくドルだけを生産する米国、ロシアの勝利を望む「その他の世界」……
「いま何が起きているのか」、この一冊でわかる!
・ウクライナの敗北はすでに明らかだ
・戦争を命の安い国に肩代わりさせた米国
・ウクライナは「代理母出産」の楽園
・米国は戦争継続でウクライナを犠牲に
・米情報機関は敵国より同盟国を監視
・NATO目的は同盟国の「保護」より「支配」
・北欧ではフェミニズムが好戦主義に
・独ロと日ロの接近こそ米国の悪夢
・ロシアは米国に対して軍事的優位に立っている
・モノではなくドルだけを生産する米国
・対ロ制裁でドル覇権が揺いでいる
・米国に真のエリートはもういない
・米国に保護を頼る国は領土の20%を失う
・日独の直系社会のリーダーは不幸だ
・日米同盟のためにLGBT法を制定した日本
・NATOは崩壊に向かう 日米同盟は?
エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらにはトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に予言。著書に『エマニュエル・トッドの思考地図』(筑摩書房)、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』『シャルリとは誰か?』『問題は英国ではない、EUなのだ』『老人支配国家 日本の危機』『第三次世界大戦はもう始まっている』『トッド人類史入門』(いずれも文春新書)『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)など。
- 本の長さ416ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2024/11/8
- 寸法13.2 x 2.7 x 19.1 cm
- ISBN-104163919090
- ISBN-13978-4163919096
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出版社より
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋
- 発売日 : 2024/11/8
- 言語 : 日本語
- 本の長さ : 416ページ
- ISBN-10 : 4163919090
- ISBN-13 : 978-4163919096
- 商品の重量 : 460 g
- 寸法 : 13.2 x 2.7 x 19.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 11,459位 (本の売れ筋ランキングを見る)
- ヨーロッパのエリアスタディ - 2位
- 東欧のエリアスタディ - 2位
- ロシア・ソビエトの政治 - 4位
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日本からのトップレビュー
- 星5つ中5つ
新しい視点があった。
2026年5月6日に日本でレビュー済み著者の考えは、自分の今までの見方とあまりにも違うので、その考えが妥当なものであるかどうか、分からなかった。
特にロシアのウクライナ侵攻の国際法上の問題をあまりにも軽視している気がする。
しかし、家族構造から社会の有り様を考え、そこから政治システムを考えるという視点は新しい。
ここに書かれた事は論争を呼ぶような意見で、そのまま受け取っていい教科書的な知見ではないだろう。しかし、それを差し引いても、勉強になる本だ。
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面白い
2026年5月10日に日本でレビュー済み面白い
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満足しています。
2026年5月3日に日本でレビュー済み満足しています。
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国民国家の求心力は何か
2026年4月27日に日本でレビュー済み西洋の衰退を、宗教観、家制度から読み解いている。
東欧といっても、宗教、家制度は国ごとに異なっており、まとめたところで意味はないと注意喚起している。
また、東欧諸国について、公開情報から考察できることを指摘している。これはインテリジェンス関連の書籍でも述べられていることで、公開情報が9割、最後の補助線が秘密情報、と言われている。いかに、色眼鏡をかけずに、対象を見るか、ということが試される。
宗教離れ、核家族化を要因と挙げているが、日本でも起こっていることを考えると、「新自由主義による社会、具体的にはコミュニティ及び中流階級の破壊」の影響が強いように思える。
社会 第一次・第二次産業の破壊
中流階級 国民国家を成立させる集団の破壊
コミュニティの破壊により、国民国家を統べる思想がなくなり、個人主義・ポピュリズムを招く
アメリカを「輸入による点滴」に頼っていると指摘しているが、これは日本でも同様である。
手始めは、食料自給率の向上だろう。
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西洋とは何を指すのか疑問
2026年1月27日に日本でレビュー済み著者や内容への評価は私ごときでは失礼と思います。しかしもっと根本的な疑問を、長い本著全編を通じて感じました。著者自信、西洋とは何なのか、西洋の外から見た説明が出来ていない。イスラムを西洋と分けているようだか、東洋的視点では、イスラムと西洋は兄弟で有り似通っている。また哲学、倫理、道徳全てにおける宗教支配から著者自身が抜け出せない。とても西洋的著作であり、その点で一読する価値が有るように感じました。
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読後、新しい視点で「世界が見える」ようになる本
2025年2月13日に日本でレビュー済み何十年ぶりかに出会った「目から鱗」を感じた書です。
翻訳は良いのですが、オリジナルの内容が盛りだくさんで難しい為、読むのに時間を要しました。21世紀を代表するレベルの1冊と思います。多くの人が読むことを望みます。
特に国の発展の指標として乳幼児死亡率の向上やある年代の平均余命などを使った説明は、納得しやすいと感じました。
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Hubris & Depravity: Civilizations die from suicide, not by murder--Arnold J Toynbee
2026年2月12日に日本でレビュー済み欧州在住の米国人ジャーナリストが、英語版はないが、との但し書き付きで原書を要約紹介していた。社会科学系書物の日本語翻訳版は体験的にプラスチック板の上を滑る水のようにほとんど頭に入らないため普段は敬遠してきたが、苦労して読了した。
A. 良かった点
1. 国際情勢については十数年来、西側世界コンセンサス形成装置の末端にある日本語メディアは勿論のこと、その卸売元である欧米の主要メデイア情報もサイコロジカル・オペレーションの一環として全く信用できず、試行錯誤を経て信頼に足ると判断した複数の米英ジャーナリスト、専門家のサイトを中心に情報収集、理解してきた。
ウクライナ紛争を巡る背景、戦況、米国の政治状況等については本書にも登場するシカゴ大学教授ジョン・ミアシャイマー、ジェフリー・サックス(冷戦終結直後ロシア、ウクライナ両国大統領の経済顧問を務めた現存する数少ないまともな、よって決してノーベル賞は受賞しない経済学者)、アラステア・クルーク(元英国政府情報局)に代表される深い経験、洞察力に基づいて客観的な意見を主張するため大手メディアから忌避された専門家達からの情報、解説を参考にしてきた。大筋についてはこれまで得てきた情報と齟齬は無かったものの、本書はその根本原因を独自の視点から深く論じている点で優れており、これまでの理解を整理・概念化することに役立った。
特筆すべきは、西側陣営が議論の大前提として設定する「西側先進国(L' Occident)の自由民主主義(Liberal Democracy)対後進的なロシア及び中国等(L' Orient)の専制主義(Autocracy)」という独善的構図を否定して、実際は「リベラル寡頭制陣営(Liberal Oligarchy)対権威主義的民主主義(Authoritarian Democracy)」の闘いであると言語化、再定義しそれを主題としている点。Liberal Oligarchyの代わりにRational Fascism, Kabuki Democracy又はLiberal Imperialismという呼称を他の学者から聞いたこともあるが、いずれが的確かは別として(個人的にはリベラルでも保守でも無いPredatory Oligarchyが最も相応しいと思うが)これは正名思想に則った試みであり、問題の本質を論じていくために必須なステップだと思う。マイダン・クーデター前後から、パワーバランスの見地よりNATOの東方拡大策、米国のウクライナ介入の危険性を批判してきたリアリストとしてのミアシャイマ―の情勢分析が如何に優れていても、その思考が旧来の枠組み内にとどまったものである点と大きく異なる。
2. 最も興味があったのは英語情報のみでは限界のある欧州大陸からの視点と各国の状況、とりわけ自称リベラル派のリーダーが大勢を占める欧州主要国、及びその上に君臨する欧州委員会の理解に苦しむ自滅的な意思決定、及び反対派を徹底的に弾圧する強権姿勢の背後に何があるのかだったが、これについて著者は計量人口学者としての手法を用いて伝統的家族相続主義による国別の差異をベースに、プロテスタンティズムの退潮段階(ゾンビ、ゼロ)、高等教育の伸長、出生率の低下、核家族化等を変数として社会のアノミー化による国民意識の低下と民主主義の消滅をもって説明している。完全には納得できないもののアプローチとしては新鮮に思えた。更に主要国以外のバルト三国、東ヨーロッパ諸国、スカンジナビア諸国別の微妙に異なる歴史に基づく西欧、ロシアに対する複雑な感情の解説も興味深いものだった。
3. 冷戦真っただ中のキューバ・ミサイル危機の際にプリズナーズ・ジレンマの発想から妥協と共生の道を選択したケネディ政権時とは対照的に、ソ連等東側諸国の官僚主義による自滅を「歴史の終わり」に代表されるように自らの勝利と過度に昇華した結果、勝者総取りのゼロサム思考に浸り、グローバル資本やプライベート・エクイティの利益率極大化と地政学上のヘゲモニーの維持、拡大を求め地球規模での不安定を拡大、再生産し続ける現代アメリカの本質をニヒリズムと明示している点。二百年足らず前にアレクシス・ド・トクヴィルがその名著「デモクラシー・イン・アメリカ」の中で、建国の父が海外介入主義の危険性を強く警告していた、誕生したばかりの合衆国の民主主義とピューリタニズムの影響による平等主義(但し、先住民族と黒人奴隷は除く)を肯定的に評価していたのに対して、同じフランス人の著者が、神の名を利用する拝金主義の伝道師達が煽る選民思想に基づく海外での戦争なしでは政治的にも経済的にも立ち行かなくなった, あたかも「1984」の「オセアニア」のような現代アメリカに於ける民主主義の死亡検案書或いは不存在証明書を記しているのは興味深い。
米英が主導したウクライナ紛争の真の目的が戦場での勝利ではなく、終わりの無い消耗戦に持ち込みロシアとドイツとの協力関係を破壊したうえでヨーロッパ全体のエンジンであるドイツの産業基盤を破壊することにあるという説もあながち陰謀論とも思えなくなった。そしてNATO創設時のトップ(英国人)が発した「Keep America In, Germany Down, Russia Out」というデモクラシーと帝国主義が何の矛盾もなく共存してきた大英帝国由来の戦略を思い出した。
4. 本書の議論は様々な角度からこれまで世界全体を支配してきた武器のひとつであるモラル上の西側優位というナラティブ(欧州委員会の前外交トップの表現を借りれば「楽園対ジャングル」という構図)を、データを用い根本から覆すものであり、過去のその他の地域での紛争についても評価し直すツールとなりうる。もうひとつの大きな武器であるドルを基軸とした国際決済システムを経済制裁の道具として使用し自らその信用を毀損させてしまったことにより、連鎖的にグローバルサウスの西側システム離れが起こり、世界規模で不可逆的にBRICSに代表されるマルチポラリズムが進行してゆくであろうことが容易に結論付けられる。今後その趨勢に必死に抗うべくあらゆる手段を講じてくるであろう西側勢力の動きとその宣伝媒体として一蓮托生の、まるで百数十年前のrobber baronに先祖返りしたようなオリガルヒ資本家が所有する大手メディア(既存、デジタルメディア、エンタテイメントを含む)や「ヒューマン・ライツ」団体からの情報に惑わされない為の理論的根拠として本書は序章から追記に至るまで有用と思われる。
B. 気になった点
1. 議論のために統計データを使用する際の常として問われるのは統計の恣意的な運用、取捨選択の危険性についてがある。例えば高等教育率といっても欧州各国の中で英米の大学や大学院の学位保持者がどの程度いるのか、また米国内での議論には工学系対ロースクール、ビジネススクールといった比較がされていたが、欧州各国の議論にはなかった。また米国内の高等教育に関する議論としてアジア系学生比率の増加と対比する形で筆者も属するある特定のエスニック集団の学生の比率低下をもってその団体の影響力が低下したと指摘しているが、これには同意できない。過去2-3年での米有名大学での言論弾圧、学長、ファカルティの首切りという事実は逆に彼らの影響力の大きさを証明している。
更に有色人種の大統領や閣僚が誕生したのは著者の言うように人種差別が無くなった証左ではなく、寧ろ厳然と存在する人種問題を表面上のデモクラシーという数の論理に取り込むため1980年代以降民営化と規制緩和により強大な資金力を手に入れた支配層が望む強権的な政策を一般大衆により抵抗なく受け入れさせるためのアバターとして選別、養成された結果という見方も多い。大統領に駆け上がるまでの不可思議な軌跡とウォールストリートの支援者たち、就任以降の選挙公約とは正反対の体制追認の政策、その他の有力非白人政治家たちの既存権力を支持する政治姿勢、更には英国政界で最も先鋭的な移民反対派のアフリカ系や南アジア出身の女性議員たちを見るとその説に同意せざるを得ない。
取り上げて欲しかった統計指標としては欧州各国に於ける特に支配層での米英仏との二重国籍者の比率、そして英語普及率、公用化度と民主主義退潮度の関係。
2. 欧州各国の事情についての説明は興味深かった一方、自国の選挙民から失格の烙印を押された明らかに資格不適合者たちがイデオロギーに基づいて強権を振るう欧州委員会、また西側でも最も好戦的な姿勢を見せるカナダについての言及は無かった。前者はそもそも民主的手続きにより選ばれたわけではないし、本書の研究手法であるデータ分析の対象外ということだろうが、かつてベトナム戦争徴兵拒否者や更に遡れば南北戦争時代に黒人奴隷脱走者を多数受け入れた後者が、如何に大戦中ナチスに協力的だった西部ウクライナからの移民の子孫が多いとはいえ、何故かくも変容したのか、リベラル寡頭主義の一例としてぜひ取り上げて欲しかった。
3. 懸念していた通り翻訳された文章がなかなか頭に入ってこなかった。フランス語独特の表現、原文を忠実に翻訳しようとした結果かもしれないが、時折りまったく意味不明な文章が現れ首をひねった。テーマについては予め基礎知識と問題意識を有していたため大意をつかむことができたが、これまで主流メディアの言説を真面目に信じてきた読者にとってはかなり読みにくい内容ではないだろうか。この点で星四つとした。尚、原題のL'Occidentは英語にすればいわゆるthe collective Westであり、単に「西洋」という漠然とした対象ではなく大航海時代から植民帝国主義時代を経て数世紀にわたって政治、経済、外交、文化すべてを包含する形で世界を支配してきた西側「先進国」優越主義という価値観そのものを指しているものと思った。
C. 雑感
1. 本書は2023年夏頃に執筆され2024年夏に日本語版へのあとがきがなされている。その後のウクライナ情勢、更に近現代史上の西側世界の宿痾を凝縮したような西アジアでの大虐殺の進行に対する西側「先進国」の残酷なまでのダブルスタンダード、非人道的対応は本書の主張をより強く裏付けるものとなっている。
現在大きなワイルドカードとされているのは、本質的にはこれまでの政権と全く変わらぬ超億万長者の意向を反映した寡頭政治(Neoliberal Oligarchy)であるにもかかわらず、表面上は反エリート、反リベラルをウリに大衆の支持を集め当選した後は選挙公約をいっさい無視し、同盟国との約束も反古にし国際法の無視を公言したうえで、ガザの瓦礫のうえにカジノリゾート施設を建設しようとする(まるで原爆ドームを撤去しその跡地にディズニーランドを計画するような)傲慢とシニシズムを前面に押し出したトランプ政権の予測不能な対応、とりわけ本書の中で最もワシントンに忠実な情報収集拠点とされているデンマークとのグリーンランドを巡る関係悪化と、貿易戦争による欧州各国との対立が欧州の自立に向かうのかという点だが、本書を読めばその可能性は少ないことが分かる。あのキッシンジャーが珍しく本音を語った「It is dangerous to be an enemy of the United States, but it is fatal to be an ally.」という警句が思い浮かぶ。
2. 著者の前著「Who is Charlie?」は英語版で読むことができたが、今回この程度の内容でも英訳版ができないのかと驚いた。先の大戦時の我が国での敵性言語の禁止、海外情報の遮断、情報統制を想起させるような昨今の欧米の大学でのロシア、アラブ研究講座の廃止、教授の解雇、デモに参加する学生への苛烈な処分、政府公式見解に異を唱える国連現役職員、専門家個人への銀行口座凍結を含む制裁、インターネット空間での言論弾圧をみると、もはや西側世界に学問、表現、言論の自由は存在しないことは明らかである。誕生時には民主主義の象徴と祝福されたアフリカ人の血を半分引く大統領によりその数年後防諜法が息を吹き返しHabeas Corpusが骨抜きにされたことも併せ見ると隔年のお祭り騒ぎの選挙戦は国民主権という幻想を維持させるためにあり、その結果は何の意味も持たず、本著の主題である「民主主義の消滅」は昨日今日始まった訳ではない事が再認識できる。
3. はるか昔、米国の某有名大学教授が学生を前に日本政治の最大のジョークとして、戦後日本を仕切ってきた政権与党はその名前とは対照的に「リベラル」とも「デモクラシー」とも最も縁遠い集団だと笑いながら話していたのを思い出す。当時はその政党を育て利用してきたのはおたくの国だろうと思ったものだが、歴代のノーベル平和賞受賞者を思い浮かべつつ本書を読むと「看板に偽りあり」は西側世界全体に共通している現象だと認識させられる。
「日本の読者へ」の中で著者は、対極にある「ネオリベラルの極西洋-米英仏-」と「その他の世界」との仲介になって欲しいとリップサービス的に述べているが、過去百五十年以上ひたすら西側先進国に受容、評価されることに一義的価値を見出し、バブル崩壊後は政財官学の分野で「改革」という名のネオリベラリズム、功利主義に席巻されたこの国でそのような独立的思考を持ったリーダーが台頭する可能性は極めて低いし、仮に出現しても過去そうであったように必ずシステムに潰されるだろう。何よりもイラク戦争以降「その他の世界」の知識層の中で我が国が国際舞台で仲介的役割を担うことができると信じている人はどれ程いるだろうか。
4. 直近の問題として米国による対イラン圧力があるが、イラン側は攻撃を受ければホルムズ海峡を封鎖すると警告している(多くの米国内専門家はこの政権にとって軍事的に如何に無理筋であっても政治力学上攻撃以外の選択肢は無いと言っている。)。そうなれば世界経済は大混乱に陥り、ドイツにとってのノルドストリーム破壊以上の大津波のような被害を日本経済が被ることになるのは火を見るよりも明らかだが、日本政府はドイツと同様に手をこまねいたまま粛々とその結果を甘受するのだろうか。
甚大な経済被害をまともに受けるであろう国民の怒りをあらぬ方向に誘導され、西側首脳が究極の目標として企図してきた、現実的には残り時間ぎりぎりの一発逆転を狙ったヘイルメリーパスである東アジアでの(石原莞爾風に言えば)世界最終戦争の尖兵に駆り出され、さらに多額な戦費を負担されたうえでウクライナや一部ヨーロッパの国民が現在被っていると同様の悲惨な目に合わないためにも、(もう手遅れかもしれないが)この本が少しでも役に立つ事を期待したい。
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現在の世界情勢の様々な論点がすんなり腑に落ちる明快な洞察に感謝!
2024年12月2日に日本でレビュー済み日本を含む西側先進諸国にとってロ・ウ戦争は、「人類が進歩した筈の21世紀もなって、
一方的に武力侵略して領土拡張を進めるロシアは悪そのものである。もしもこのまま
ロシアが占領地域を確保したままで和平が進めば、世界が野蛮な武力侵略を認める
ことになり、断じて許してはならない」という一般認識であろうが、これが余りに
単純で一面的な見解に過ぎないことを、本書は明快に示している。
かつてのベストセラー「文明の衝突」サミュエル・ハンチントンでは、現代文明の中で
唯一「日本」のみが一国で独自の文明を築いているという卓見が述べられているが、
更に特徴的だったのが、西欧文明とロシア文明の境界がウクライナを分断しており、
これは本質的に異なる文明で決して融和することのない厳然たる断裂であるとの
見解がある。
本書「西洋の敗北」でも、数多くの具体的データに基づき、ウクライナの東西でロシア系
住民主体の地域とそれ以外で分断されていることが明確に示されている。
その上で、2014年以降クリミアを含む実質的なロシア支配地域を西側に組み入れるべく
奪還しようとするウクライナによる戦争は、自殺行為であると断じている。
その背景には、米国による軍事支援と「ロシア嫌い」の蔓延があるが、本質的な現実を
変えることなどできないとしている。
本書のテーマである「西洋の敗北」面では、自ら自由かつ民主主義革命を成し遂げた
英・米・仏が、揃ってかつての工業大国から、ひたすらお金を産み出すだけの金融大国に
変わってしまっており、実質的な国力は既に削がれてしまっていることが示される。
米国では、真の生産を行う「物質的経済分野」は20%程度に過ぎず、他の対人サービスも
真の生産に関わる部分は4割程度に過ぎない。
米国の一人当たりGDP(国内総生産2022)は76,000ドルであるが、これは見せ掛けだけで
一人当たりRDP(国内実質生産)は、西欧を下回る39,520ドルに過ぎないとする。
国内生産できない必要物資は輸入に頼っているため実質赤字となるが、ドルが
国際基軸通貨であることを楯に、無節操な国債発行でドルを産み出し続けている。
英国でも同様であり、更に行き過ぎた民営化では、本来国民の福祉に供すべき
公共事業が民間の手に渡り、価格高騰とサービスや機能の低下を招いているが、
上下水道など独占市場では住民側としては代替も持てず、特に低所得層のダメージは
大きくなる一方である。
西洋諸国は、宗教・家族・道徳面において、形式的なゾンビ状態から更にゼロへと転落
しており、もはやそこには国家統一のための核となるアイデンティティが存在しなくなり、
個人レベルに解体されてしまっている。
これでは、国家の理念を実現するための国民的求心力など、既に得ることができなく
なっており、国民国家の崩壊を招いている。
日本を含む西洋諸国が繁栄を謳歌できているのも、他の国々による地道な労働の成果を
略奪した結果である。西洋の労働者階級にとっても、見せ掛けの労働で賃金は高いが、
自分たちで生産するのに比べれば、格安で手に入る輸入品を享受するばかりであり、
収奪者側であることには変わりがない。
本書の400頁余りの文章は実に中身が濃く、全ての章で十分な説得力を持って
問いかけてくる。まさに「今、世界で何が起きているのか。この1冊でわかる!」
というキャッチにも納得である。
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